スター勢揃い!イタリア屈指の劇場が総力をあげての来日公演
今年最も話題のイタリア・オペラ公演といえば、6月に来日するパレルモ・マッシモ劇場だろう。シチリア最大の都市パレルモにそびえるイタリア屈指の劇場が、《椿姫》《トスカ》というイタリア・オペラの大人気作を、今望める最高のキャストで上演する。
マッシモ劇場の創設は1897年。歌劇場の建物としては、ウィーンの国立歌劇場、パリの旧オペラ座(ガルニエ宮)に次ぐヨーロッパ第三の規模を誇る。映画『ゴッドファーザー PART Ⅲ』のラストシーンが撮影された劇場といえば、思い当たる方もあるだろう。建築家のバジーレ父子が設計した劇場は、イタリアのアール・ヌーヴォー様式(「リバティ様式」とも呼ばれる)の代表的建築に数えられており、神殿のように重厚な外観と、繊細な装飾、極彩色の壁画や天井画がちりばめられた華麗な内部を併せ持つ。2007年に初来日し、シチリアゆかりの演目である《シチリア島の夕べの祈り》や《カヴァレリア・ルスティカーナ》などで好評を博した。
10年ぶりとなる今回の来日では、イタリア・オペラを代表する人気作として世界を席巻する2作を披露。キャストのほとんどがイタリア人で、“イタリアらしさ”が漂う公演になるのも嬉しい限りだ。《椿姫》では、パレルモが生んだ世界のプリマであり、近年ヴィオレッタ役で絶賛を博しているデジレ・ランカトーレに、75歳にして未だ世界最高のヴェルディ・バリトンでありつづけている奇跡の歌手レオ・ヌッチ、明るい音色と端正な歌唱で世界中の歌劇場からアルフレード役にひっぱりだこのアントニオ・ポーリと、現在の理想といえるキャスティングがなされている。指揮のフランチェスコ・イヴァン・チャンパは、ヌッチも高く評価する若手の期待株だ。マリオ・ポンティッジャの演出は、劇場ゆかりのリバティ様式を生かした、美しくスタイリッシュなものだという。
一方《トスカ》では、もっともゴージャスなオペラ・スターで、トスカ役で世界の一流歌劇場を魅了しているアンジェラ・ゲオルギューの登場が話題。共演陣も、イタリア・オペラを代表するテノールとして活躍中のマルチェッロ・ジョルダーニ、そして今が旬のバリトン、セバスティアン・カターナとトップクラスが揃った。指揮のジャンルカ・マルティネンギも、マッシモ劇場ゆかりの指揮者。歴史に忠実なポンティッジャの壮麗な演出ともども、これぞイタリア・オペラ! という情熱的な公演となるに違いない。
イタリアの歌劇場の来日は、今年はマッシモ劇場だけ。初心者の方から“通”の方まで、多くのオペラファンにとって見逃せない公演である。
文:加藤浩子
(ぶらあぼ 2017年6月号から)
《椿姫》6/18(日)15:00 東京文化会館
6/21(水)18:30 Bunkamuraオーチャードホール
《トスカ》6/19(月)15:00 東京文化会館
6/22(木)18:30 Bunkamuraオーチャードホール
問:コンサート・ドアーズ03-3544-4577
※全国公演の詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
http://www.concertdoors.com/