三浦文彰(ヴァイオリン)

俊英がコンチェルト2曲の弾き振りに挑む

©Yuji Hori
 ひとつの公演すべてを、一人のソリストによる協奏曲で。こうした趣向の新しいコンサートシリーズ『スーパーソロイスツ』が、エイベックス・クラシックスの主催でスタートする。その第1回目に、同レーベルからCDをリリースしているヴァイオリニストの三浦文彰が登場し、モーツァルト(第5番「トルコ風」)とベートーヴェンの名協奏曲を演奏する。オーケストラは東京フィルハーモニー交響楽団。
「モーツァルトはハノーファーの国際コンクールを受けた16歳の頃から、ベートーヴェンは20歳の頃から弾いていますが、どちらも常に新しい気分で弾けるという追究しがいのある作品です。モーツァルトはコンチェルトであってもオペラのように、さまざまな場面やキャラクターを細かく想定しながら演奏していました。しかし今ではそうしたことも大切にしつつ、大きな音楽の流れや作品の存在感を捉え、スタートからゴールに至る道筋を意識するようになりました。ベートーヴェンは作品自体が“大きな山”のようであり、その演奏は長い旅にたとえられるでしょう。弾き終わっても、また最初から弾きたいと思えるくらい魅力的であり、常に自分との関係を問われているようにも思えます。特に第1楽章は、コンサートがなくても日常的に弾いているほどですから、自分を維持したり意識を明快にするための大切な音楽なのです」
 今回は2曲とも指揮者なしの弾き振りにチャレンジ。バッハやモーツァルトの曲ではすでに体験済みだが、ベートーヴェンは初めての取り組みであるため、なおさら注目したくなる。
「どんな曲であれ、コンチェルトは“大きな室内楽”だと思ってきましたし、オーケストラや指揮者とのコミュニケーションも大切にしてきました。弾き振りとなると、ますますオーケストラとの対話が重要になりますし、互いに細やかな反応をしなくてはいけません。基礎的な指揮の仕組みについても知りたいので、指揮者の方にレッスンをお願いしようかと考えています。今回のコンサートは常にチャレンジしていたい自分にとって、どういった新しい音楽をお聴かせできるのかという課題を出されているようなものですから、それにしっかりお応えしたいと思います」
 コンサートでは演奏中の姿を複数のカメラで捉え、巨大スクリーンに投影するという試みも。最近ではヴィオラを弾いたり料理に凝ったりしながら、表現の可能性や新しいアイディアについて得ることも多いという三浦だけに、新鮮な音楽が期待できるだろう。
取材・文:オヤマダアツシ
(ぶらあぼ 2017年6月号から)

スーパーソロイスツ 
第1回 三浦文彰 plays モーツァルト&ベートーヴェン
7/17(月・祝)14:00 Bunkamuraオーチャードホール
5/27(土)発売
問:チケットスペース03-3234-9999
http://www.ints.co.jp/