新たな企画も加わり、より多彩で充実した内容に
第22回目を迎える宮崎国際音楽祭。今年も豪華で多彩なプログラムが用意されているが、それを支えているのは最初の年から続く“骨太”な考え方なのだと思う。教育、アジアとの連携、一流の演奏家との交流。そうした意図が隅々にまで感じられるプログラムだ。
豪華アーティストが集結するメインプログラム
まず5つのメインプログラムから紹介しよう。5月1日の「エクスペリメンタル・コンサート『アジアン・フロンティア』」は松村禎三、イサン・ユン、タン・ドゥン、黛敏郎などのアジアの現代音楽作品を集めたコンサート。いま、ここでしか聴けない室内楽作品を集めている。チェロのミッシャ・マイスキーとヴァイオリンのライナー・キュッヒルらのウィーンの音楽家たちによる「華麗なる重奏」(5/6)は、ベテラン演奏家たちの楽しい会話の場となりそうだ。メンデルスゾーンの弦楽八重奏曲などが演奏される。
宮崎国際音楽祭の目玉のひとつ、実力派演奏家の集まる宮崎国際音楽祭管弦楽団によるオーケストラ・コンサート「楽聖に至る扉」(5/7)は、ヴァイオリンのピンカス・ズーカーマンを迎え、彼の指揮・ヴァイオリンによりベートーヴェンの「運命」と「ヴァイオリン協奏曲」が演奏される(同じプログラムが5/11、熊本県立劇場でも熊本地震復興支援コンサートとして開催される)。ズーカーマンを中心にした「豊饒の室内楽」(5/12)では、シューベルトのピアノ三重奏曲とブラームスのピアノ四重奏曲が披露される。そして5月14日、メインプログラムの最後を飾るのは「ヴェルディの世界『愛に生き、愛に死す』」。ヴェルディの代表作《椿姫》(全曲)を演奏会形式で届ける。指揮は広上淳一。ヴィオレッタに中村恵理、アルフレードに福井敬、ジェルモンにアメリカの誇る名バリトン、アンドリュー・シュレーダーなどを配する歌手陣、そしてオーケストラは宮崎国際音楽祭管弦楽団が出演。広上の得意とする演目であり、その柔軟で熱い音楽作りにも注目したい。
“トーク&コンサート”や街中での公演も
宮崎国際音楽祭のもうひとつの特徴は、メイン以外のプログラムの多様さだろう。宮崎市以外で行われるサテライト・コンサート、宮崎市内の特設会場で行われるコンサート、ワンコインで楽しめる500円コンサートなど、多彩なラインナップが用意されている。その中で注目したいのは4月30日に開催される「シリーズ『Oh! My! クラシック』だ(メディキット県民文化センター 演劇ホール)。NHKの『クローズアップ現代』でキャスターとして23年間も活躍した国谷裕子をゲストに迎える。トークと音楽で人生を綴る新しい形の“トーク&コンサート”だ。5月4日にはチェロのマイスキーを中心に、アマンダ・フォーサイス、原田禎夫、古川展生など、世界的チェリストが集合する「マイスキーと驚異のチェロ・アンサンブル」と題された公演も。5月13日には宮川彬良が登場して、映画音楽、ミュージカルなどの楽曲を宮崎国際音楽祭管弦楽団が演奏するポップス・コンサートも開催される。
宮崎国際音楽祭の柱のひとつ、若い演奏家を育てるプログラム「ミュージック・アカデミー in みやざき 2017」は3月に開催されたが、その中から選ばれた優秀な受講生による「新星たちのコンサート」には次代の才能が集う(5/13)。4月29日には「みやざき国際ストリート音楽祭 2017」が市内の宮崎橘通で開催され、音楽祭をさらに盛り上げる。コンサートホールだけではない音楽の楽しみ方を発見できるし、クラシックをあまり知らないという方には、ぴったりのイベントとなるだろう。
文:片桐卓也
(ぶらあぼ 2017年5月号から)
4/28(金)〜5/14(日) メディキット県民文化センター(宮崎県立芸術劇場) 他
問:宮崎国際音楽祭事務局0985-28-3208
http://www.mmfes.jp/