TACT/FESTIVAL 2017 シルコ・アエレオ『ピアニスト』

ダンスとサーカスが合体した魔法のような作品

Photo:Juho Rahijärvi
 神経質そうなピアニストが演奏のためピアノに向かう。しかし肝心のピアノになかなかたどり着けない。やっとたどり着いても、カバーを取ってフタを開けるのも容易ではない。そして、さらに予想もつかないような災難が次々にピアニストに襲いかかる…。
 これはいわば「一人サーカス」である。卓越した体技と、磨き抜かれたユーモアでピアノと格闘するうち、笑いながら深い世界に引き込まれていくのだ。
 上演するカンパニー、シルコ・アエレオの「シルコ」はサーカスのこと。拠点とするフィンランドは国立のサーカス学校があるほど活発な国である。本作を創作したトーマス・モンクトンはニュージーランドでサーカスを学び、ニューヨークで人気を博した経歴の持ち主だ。演じるコートニー・スティーヴンスはこの名作を、ひょろ長い彼自身のキャラクターを活かして、30ヵ国以上で公演を重ねてきた。ピアノを弾く、ただそれだけのことが、一編の楽しい物語になってしまう、魔法のような作品だ。
 本作は毎年世界最先端のパフォーマンスを紹介しているタクト・フェスティバルの演目のひとつ。家族で舞台三昧の一日もいいのではないだろうか。
文:乗越たかお
(ぶらあぼ 2017年5月号から)

5/4(木・祝)〜5/7(日)
東京芸術劇場 シアターイースト
問:東京芸術劇場ボックスオフィス0570-010-296 
http://www.geigeki.jp/