人間の欲望とその先にある信仰について問いかける
古典バレエを大胆に読み替えた『ラ・バヤデール—幻の国』や緻密な作風の『愛と精霊の家』など次々に話題作を上演し、上昇気流に乗っている金森穣とNoism。2017年の新春も意欲的な新作初演、しかも2本立てでスタートする。第1部が『マッチ売りの話』、第2部が『passacaglia』。物語のある作品と抽象的な作品を組み合わせたのは、「2作品は無関係ではなく、互いに共鳴し合い、終演後観客の裡に深く重層的な1つの心象を生み出すことを目指す」という意図によるものだ。
『マッチ売りの話』は、昨年第1弾『箱入り娘』で開始された「近代童話劇シリーズ」の第2弾。おなじみのアンデルセン原作の童話『マッチ売りの少女』と、日本を代表する劇作家の別役実の同名の不条理劇の2作品から構想された。異なる二つの時代の物語がダンスの世界でいかに重なり合うかが、大きな見どころとなりそうだ。音楽は、デヴィッド・ラングの「マッチ売りの少女の受難」と梅林茂の楽曲。一方、『passacaglia』は、オーストリアの作曲家ハインリヒ・ビーバーの宗教音楽「パッサカリア」と、新潟在住の現代音楽家・福島諭のオリジナル音楽を使用する。衣裳はいずれも中嶋佑一。「二つの作品を通して、人間の欲望に満ちた現代社会と、その先にある信仰とは何かを問いかけたい」と金森。新潟、埼玉両公演とも、舞台の息づかいが伝わる小空間を会場に選んだことからも、今回の作品にかける特別な思いが伝わってくる。
文:渡辺真弓
(ぶらあぼ 2017年1月号から)
2017.1/20(金)〜1/29(日)、2/17(金)〜2/26(日) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 スタジオB
2017.2/9(木)〜2/12(日) 彩の国さいたま芸術劇場(小)
問:りゅーとぴあチケット専用ダイヤル025-224-5521
彩の国さいたま芸術劇場0570-064-939(埼玉公演のみ)
http://www.noism.jp/