新鮮な驚きで満たされるオール・ロシアン・プログラム
新日本フィルの音楽監督就任1年目にして、すでにいくつかの名曲を刷新するような演奏を展開。「次はどんな音楽を聴かせてくれるのか」と思わせてくれる上岡敏之。
多層的に音が重なるスコアを抑制された美によって再現したような「ツァラトゥストラはかく語りき」、快速テンポで音楽を躍動させ、古典派交響曲としての一面に強い光を当てたような「運命」交響曲など、どのような名曲であっても「聴いたことがない新鮮さ」を提示してくれる。
12月はサントリーホールでの定期演奏会「ジェイド」と、横浜みなとみらいホールでの特別演奏会を同じプログラムで。ストラヴィンスキーの「プルチネッラ」(25分ほどの組曲版)は、ペルゴレージなど、主にイタリア・バロック音楽をストラヴィンスキー流にアレンジした新古典主義時代の傑作。チャイコフスキーの「くるみ割り人形」組曲は言わずと知れた名曲であり、エキゾティックな民族音楽テイストと夢見心地な色彩感がエッセンスになっている作品。そしてソヴィエト音楽の金字塔であり、重厚さと軽妙さが交錯しながら聴き手を興奮に導いてくれるプロコフィエフの交響曲第5番。切れ味のよい音楽が期待できるストラヴィンスキー、サプライズが潜んでいる可能性も高いチャイコフスキー、引き締まった造形美がホールを満たすプロコフィエフ。曲を聴き慣れている方は、新鮮な驚きを体験できる可能性も大なのだ。
文:オヤマダアツシ
(ぶらあぼ 2016年12月号から)
横浜みなとみらいホール 特別演奏会
12/4(日) 14:00 横浜みなとみらいホール
第567回 ジェイド〈サントリーホール・シリーズ〉
12/6(火)19:00 サントリーホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815
http://www.njp.or.jp/