精鋭アンサンブルで織り成す“小編成”のマーラー
演奏者、曲目ともに注目すべき楽しみな公演が実現する。パリ管弦楽団と紀尾井シンフォニエッタ東京の名手たちが紀尾井ホールに集い、マーラーの交響曲第4番室内楽版を演奏する。紀尾井シンフォニエッタ東京のコンサートマスターでパリ管弦楽団の副コンサートマスターを務める千々岩英一を中心に、井上静香(ヴァイオリン)、篠﨑友美(ヴィオラ)、エリック・ピカール(チェロ)、池松宏(コントラバス)、ヴィセンス・プラッツ(フルート)、フィリップ=オリヴィエ・ドゥヴォー(クラリネット)他、そうそうたる12名のアンサンブルにソプラノの小林沙羅が加わる。
マーラーの交響曲第4番の編曲者は、シェーンベルクの友人であり弟子のエルヴィン・シュタイン。1918年、シェーンベルクはウィーンに私的演奏協会を設立して多くの同時代作品を上演した。その際、マーラーらのオーケストラ作品を演奏するために、このような室内楽版が生み出された。
マーラーの交響曲のような大編成の作品を室内楽版で演奏するとは一見逆説的だが、フルート、オーボエ、クラリネット、ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、ピアノ、打楽器、ハーモニウムというコンパクトな編成にもかかわらず、この編曲は予想外の再現度の高さを感じさせる。そして、この編成だからこそ見えてくる作品の骨格があるのではないだろうか。
ほかにドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」、ヨハン・シュトラウス2世の「皇帝円舞曲」「南国のバラ」も室内楽版で演奏される。発見にあふれた一夜となるはず。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ 2016年9月号から)
11/29(火)19:00 紀尾井ホール
問:紀尾井ホールチケットセンター03-3237-0061
http://www.kioi-hall.or.jp