グジェゴシュ・ノヴァック(指揮) 東京ニューシティ管弦楽団

復興支援が生んだ巨匠ツィメルマンとの邂逅

 巡り合わせは、時に思わぬ結果をもたらす。東京ニューシティ管の11月の定期演奏会に、かのクリスチャン・ツィメルマンが出演するニュースは、大きな話題を呼んでいる。これは彼が、ポーランドの作曲家クナピクの協奏曲の日本初演を行うと同時に、東日本大震災の復興支援を申し出ていた公演。ところがポーランドでの世界初演が延期されたため、日本での演奏も叶わなくなった。ならば出演中止かと思いきや、彼は被災者支援を優先。演目をベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番に変更し、予定通り(ツィメルマンと指揮者は無償にて)出演することと相なった。
 こうなると別の楽しみが生じる。それはもちろん、世界屈指のピアニスト、ツィメルマンが弾くベートーヴェンの協奏曲が聴けること。バーンスタイン&ウィーン・フィルとの録音から27年、ストイックに音を吟味し、細部に神経を張り巡らした演奏法を究める今のツィメルマンが、デリケートで叙情的な第4番をいかに奏でるか? 興味津々であるのは論をまたない。また、元々のプログラムの中でも、ゴルチャコフ編曲の「展覧会の絵」が大注目だ。モスクワ音楽院の教授だった編曲者が1954年に発表した同版は、原曲のピアノ版に沿ったもので、ラヴェル編に比べるとロシア風の色合いが強く、打楽器を多用した響きが耳を刺戟する。指揮は、ツィメルマンと同じくポーランドに生まれ、現在ロイヤル・フィルのパーマネント・アソシエイト・コンダクターを務めるグジェゴシュ・ノヴァック。見どころの多い当公演は、東京ニューシティ管が掲げるモットーの“いつもなにかがあたらしい”を実感する好機でもある。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ 2016年8月号から)

11/1(火)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京ニューシティ管弦楽団 チケットデスク03-5933-3266
http://tnco.or.jp