『ヨセフと不思議なテクニカラー・ドリームコート』

話題の振付家が巨匠のデビュー作を新演出!

 1967年、まだ10代の作曲家志望の学生が、小学校の音楽の先生から学芸会で発表するための楽曲を依頼され、先輩に作詞を頼んで15分の小品を完成させた。この「学生」が、アンドリュー・ロイド=ウェバー(『キャッツ』『オペラ座の怪人』『エビータ*』)、「先輩」がティム・ライス(『ジーザス・クライスト・スーパースター*』『ライオンキング』)、そして「小品」が、『ヨセフと不思議なテクニカラー・ドリームコート』の原型(*は2人のコンビ作品)。つまり、この作品は天才クリエイター誕生のキラキラする瞬間をとらえた、若さと希望に満ちた初々しいミュージカルなのだ。
 父に溺愛されて美しいコートを授かったことで、他の兄弟に疎まれ波乱の半生を送る、旧約聖書のエピソードに基づくヨセフのストーリー。学校劇からスタートした小品はいつしか長尺のミュージカルに進化し、1980年代以降はブロードウェイなど北米での上演も盛んになった。特に92年にトロントで開幕したダニー・オズモンド主演版(スティーブン・ピムロット演出)は、ロングランし映像化もされたことで、その、子どもがたくさん出てきて合唱するオープニング場面が定着。2011年、東日本大震災の影響で途中で公演中止になってしまった初の来日版も、このスタイルを踏襲していた。
「そんな子ども目線を改めるためにはどうしたらいいかをまず考えた」と語るのは、今回の振付・演出を担ったアンディ・ブランケンビューラー。いまブロードウェイで社会現象的大ヒットを続け、トニー賞史上最多の16部門でのノミネートを記録した『ハミルトン』で振付を手がけ(もちろん振付賞候補)、俄然注目を集める俊英だ。その演出は、おとなの共感を引き寄せるべく、子どもの合唱を廃し、現実に押し潰され夢を見ることを忘れてしまった青年の姿を見せる導入部から、ひと味違う。
 さらに、今もっともイキのいい振付家らしく、ノンストップで流れる楽曲にあわせて踊りまくるダンス・シーンが圧巻。ロック、カントリー等あらゆる曲調を繰り出すロイド=ウェバーに負けじと、バレエ、ヒップホップ、ジェローム・ロビンズ、ボブ・フォッシーなど、レジェンドからストリートまで潤沢なダンスのボキャブラリーを惜しみなく繰り出し、見事なレビューショーを完成させている。巨匠のルーツと旬の才能による、ノリノリのエンタテインメントでスカッとしよう!
文:伊達なつめ
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年7月号から)

7/13(水)〜7/24(日) 東急シアターオーブ
問:Bunkamuraチケットセンター03-3477-9999 
http://theatre-orb.com