金子三勇士(ピアノ)

205年にわたる“ソナタ”のタイムトラベル

 ©Ayako Yamamoto

©Ayako Yamamoto

 5年という時間は、真摯に取り組む者には十分に成長をもたらしてくれる。21歳で日本でのピアニスト・デビューを果たした金子三勇士が、今年で活動5周年を迎える。北は東北の被災地ボランティア公演から南は九州公演、コンサートホールからアウトリーチ先の小学校まで、大小様々なステージ経験を重ね、音楽家として揺るぎない芯を固めてきた。
「正統派のクラシック音楽アーティストであること、聴衆に対してフレンドリーであること、そして挑戦を続けること、この3つを大切にしています。リストが設立した音楽院で10年かけて学んだことが、僕にとって音楽家としてのアイデンティティであり、『正統派』としての拠り所となっています。一方で、クラシック音楽は『難しい』『お高い』といったイメージが日本の各地にあることも知りました。この5年で視野が広がった分、お客様に対して一層『フレンドリー』でありたいと願うようになりました。例えば、なぜピアニストは燕尾服を来てステージに登場するのか、そんなトークをコンサートで交えると、ピアノ音楽の楽しさが伝わりやすくなると実感しています」
 9月に東京オペラシティで開かれる5周年記念リサイタルは、金子にとって大きな「挑戦」だ。「5大ソナタに挑む!」と題し、モーツァルト「トルコ行進曲付き」の第11番、ベートーヴェン「月光」、ショパン第2番「葬送」、そしてバルトーク、リストの5つのソナタを“メインディッシュ”に、「きらきら星変奏曲」「愛の夢」「ラ・カンパネラ」など名曲の“サイドディッシュ”も取り揃えた長大なプログラムを展開する。
「ピアノ・ソナタの原点と言われるスカルラッティの作品も含め、バロックから近現代まで205年のタイムトラベルをお楽しみいただきます。『トルコ行進曲』も『愛の夢』もいわゆる名曲ですが、僕なりに原点に立ち返って楽譜を読み込み、新鮮に磨き上げた演奏をお届けします」
 3時間を超える内容だが、金子自身によるトーク付きなので親しみやすい公演となりそうだ。
「フラリとお立ち寄りいただいて、気軽に楽しい午後を過ごしていただきたいですね。学生にはワンコインで参加できる『Miyujiシート』もご用意しています」
 昨今では生け花を習い、日本の伝統的な芸術にも目を向ける金子。次の5年は、「ハンガリーと日本の血を引く自分だからこそできる、グローバルな活動をスタートしたい」と目を輝かせた。
取材・文:飯田有抄
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年7月号から)

9/18(日)15:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040
http://www.japanarts.co.jp