アンサンブル・モデルン唯一のヴィオリストが登場!
常に新しい可能性が模索される現代音楽では、演奏する側にも自在な編成・柔軟な対応力が求められる。一人ひとりがソリスト級の精鋭からなる現代音楽の世界的トップ集団アンサンブル・モデルンで、笠川恵は2010年より唯一のヴィオラ奏者として重責を担っている。
もともとヴァイオリンからスタートした笠川だが、今井信子との出会いをきっかけにヴィオラに転向する。ジュネーヴ留学中、現代曲の代演を引き受けたのが運命を変えた。以降、彼女はたびたびアンサンブル・モデルンに呼ばれるようになる。それは事実上の入団試験だった。
同グループでは、超難曲や他分野とのコラボは日常茶飯事。バッハと現代曲を組み合わせるB→Cのシリーズでは、「探求」を意味する“リチェルカーレ”をテーマに、そんな笠川の幅広い活動を凝縮したプログラミングになった。まずはバーグスマ「《トリスタンとイゾルデ》の主題による幻想的変奏曲」とグリゼー「プロローグ」の2曲で60年代から70年代にかけての音楽シーンをたどる。田中吉史「ヴィオラとピアノの通訳によるL.B.へのインタビュー」は、ベリオへのインタビューを器楽で再現したもの。バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番(ヴィオラ編曲版)、シューマン「幻想小曲集」では、聴き手に爽快な後味を与えるシャープで理知的なアプローチが確認できよう。この間にエレクトロニクス(野中正行)との共演曲、ハーヴェイの「リチェルカーレ」が挟まる。
ピアノを担当するのはアンサンブル・モデルンのメンバーとしても活躍するウエリ・ヴィゲット。こちらも大胆かつ繊細、個性的なピアニストだ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年6月号から)
6/28(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール
問:東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999
http://www.operacity.jp