ロベール・ルパージュ『887』

“俳優”ルパージュのソロ作品、日本初演

Photos by Érick Labbé
Photos by Érick Labbé
 ロベール・ルパージュ演出作品の来日が相次いでいる。『針とアヘン』(2015年10月、世田谷パブリックシアター)、シルク・ドゥ・ソレイユ『トーテム』(16年2月〜)に続いて、ルパージュ自らが出演するソロ作品『887』が東京芸術劇場、りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館で上演される。ルパージュは世界的に最も注目される演出家であるだけでなく、自らがきわめてすぐれた俳優でもある。そんなルパージュの色々な顔を一度に楽しむことができる、またとないチャンスである。
 『887』は自伝的な色彩の濃い作品であり、いささか謎めいたタイトルは、彼が子ども時代を過ごしたアパートメントがケベック・シティのマレー通り887番地にあったことから来ている。ケベック・シティはケベックの州都であるが(彼らは「首都」と呼ぶ)、ケベックでは1960年代からカナダからの分離独立を求めるナショナリズム運動が強まった。そのケベックの歴史がルパージュの半生に重ね合わせられる。
 複数の役と言語を演じ分ける、俳優としてのルパージュの魅力あふれる演戯、ユーモラスであると同時にほろ苦く、切なさを感じさせるテクスト、相変わらず巧みとしかいえない映像の用い方、回想される記憶の情景を表すミニチュアの舞台美術(ルパージュ作品では、舞台装置もまた容貌と表情を変え続ける役者の一人なのだ)…と、本作品の見どころは尽きない。ぜひ舞台の近くに席を構えてご堪能のほどを。
文:藤井慎太郎
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年5月号から) 

6/23(木)〜6/26(日) 東京芸術劇場 プレイハウス 
発売中
問:東京芸術劇場ボックスオフィス0570-010-296 
http://www.geigeki.jp
7/2(土)、7/3(日)各日14:00 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場
4/20(水)発売
問:りゅーとぴあチケット専用ダイヤル025-224-5521 
http://www.ryutopia.or.jp