第105回 紀尾井シンフォニエッタ東京 定期演奏会

弦楽オーケストラの三者三様を味わい尽くす


 紀尾井ホールのレジデント・オーケストラとして、意欲的な活動を展開する紀尾井シンフォニエッタ東京。毎回、室内オーケストラならではの工夫が感じられるプログラムが興味をひく。第105回定期では、ブリッジの「弦楽のための組曲」、ペルトの「タブラ・ラサ」、ドヴォルザークの「弦楽セレナーデ」という3曲が演奏される。つまり、今回は弦楽オーケストラのためのプログラムが用意された。
 リーダーとしてアンサンブルを率いるのは、ヴァイオリニストのアントン・バラホフスキー。現在、バイエルン放送交響楽団のコンサートマスターを務める実力者である。ソリストや著名楽団の首席奏者たちが顔をそろえた精鋭集団とともに、精妙で潤いの豊かなサウンドを作り出してくれることだろう。
 今回の公演では3曲それぞれが異なる時代と地域から生まれた作品である点もおもしろい。フランク・ブリッジはブリテンの師として知られるイギリスの作曲家で、「弦楽のための組曲」は擬古的な装いを持った20世紀初頭の作品。ペルトは現代エストニアの作曲家で、「タブラ・ラサ」は静謐さとリリシズムを湛えた代表作のひとつ。ドヴォルザークの「弦楽セレナーデ」は19世紀後半の民族主義から生まれたこの分野の記念碑的名作。弦楽オーケストラの三者三様を味わい尽くすことができそうだ。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年4月号から)

6/17(金)19:00、6/18(土)14:00 紀尾井ホール
問:紀尾井ホールチケットセンター03-3237-0061
http://www.kioi-hall.or.jp