高関 健(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

宗教音楽家としてのドヴォルザークの真価を伝える

 東日本大震災からまもなく5年が経とうとしている。3月になると祈りの音楽に耳を傾けたくなるという方も多いのではないだろうか。東京シティ・フィルが3月18日の定期演奏会に演奏するのは、ドヴォルザークの「レクイエム」。常任指揮者高関健の指揮のもと、東京シティ・フィル・コーアの合唱と実力者ぞろいの独唱者陣とともに、鎮魂の祈りを捧げる。
 ドヴォルザークの「レクイエム」という選曲は目をひく。古今のレクイエムのなかで決して人気作とはいえないものの、敬虔なカトリック信者であったドヴォルザークならではの渾身の意欲作である。
 ドヴォルザークが「レクイエム」を作曲したのは1890年、49歳の年。交響曲第8番を書きあげた翌年にあたる。たびたびイギリスを演奏旅行で訪れて暖かく迎えられていたドヴォルザークは、バーミンガム音楽祭からの依頼にこたえて、この年の大半をかけてレクイエムを完成させた。1876年に「スターバト・マーテル」が作曲された際には、娘が世を去ったことへの悲しみが作品に投影されていたが、この「レクイエム」に関しては作品に直結するような個人的な悲劇は見当たらない。むしろ、作曲家として名声を高めた幸福な時代に生まれた円熟期の作品といえる。
 敬虔さと詩情豊かさが一体となったレクイエムが、宗教音楽作曲家としてのドヴォルザークの真価を伝えてくれることだろう。ソリストは中江早希(ソプラノ)、相田麻純(メゾソプラノ)、山本耕平(テノール)、大沼徹(バリトン)。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年3月号から)

第296回 定期演奏会 3/18(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002
http://www.cityphil.jp

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