シルヴァン・カンブルラン(指揮) 読売日本交響楽団

“夜の調べ”にゆったりと浸る

シルヴァン・カンブルラン ©読響
シルヴァン・カンブルラン ©読響

 毎回、意欲的なプログラムを聴かせてくれるシルヴァン・カンブルランと読響。このコンビが2月に披露するのは、マーラーの交響曲第7番「夜の歌」とモーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」(=小さな夜の音楽)を組み合わせた、「夜曲」のプログラム。なるほど、その手があったかと思わされる。
 モーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」はだれもが耳にしているだろう超名曲であるが、ここでいう「ナハトムジーク」が意味するのは、天文現象としての夜ではなく、セレナード(ノットゥルノ)と考えるべきだろう。元来は戸外で恋人のために演奏する曲であったセレナードが、やがてさまざまな編成による多楽章の作品のために使われる言葉となった。モーツァルトのこの作品も、あたかも交響曲のような4楽章構成を持つが、本来5楽章構成で書かれた作品から第2楽章が消失して、現行の形になっていることが知られている。
 この「交響曲のような外観を持っているけれど、本当はセレナード」という図式は、マーラーの全5楽章からなる交響曲第7番「夜の歌」にもあてはまるのではないだろうか。第2楽章と第4楽章に「夜曲」を持ち、交響曲のパロディのような性格も垣間見える問題作を、どうカンブルランが表現するか。読響との精妙なアンサンブルが、新たな発見をもたらしてくれることだろう。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年2月号から)

第555回 定期演奏会
2/12(金)19:00 サントリーホール
第184回 東京芸術劇場マチネーシリーズ
2/14(日)14:00 東京芸術劇場コンサートホール
問:読響チケットセンター0570-00-4390
http://yomikyo.or.jp