デビュー40周年を締めくくる2大協奏曲の夕べ
日本を代表するヴァイオリニスト、大谷康子にとって2015年はデビュー40周年を迎えた記念すべき年。1709年製ストラディヴァリウス“エングルマン”(日本音楽財団より貸与)を手に、5月には、4曲の協奏曲を一挙に演奏するという快挙を達成し、話題になった。さらに、9月には大好きなお菓子をテーマにした名曲アルバム『大谷康子のお菓子な名曲サロン』のリリース及び同企画による公演(人気パティシエ・鎧塚俊彦とのコラボも好評)、11月にはジャズ界の巨匠ピアニスト・山下洋輔とのドリーム・デュオ公演と、お祝いムードが盛り上がりを見せている。そんな今年を締めくくるにふさわしい、二大人気協奏曲(メンデルスゾーン&チャイコフスキー/弘前公演はチャイコフスキーのみ)を一挙に演奏するスペシャルな公演も12月に控えている。
「プロとしてのデビューが名古屋フィルとの共演でしたので、コンチェルトは私が一番好きな分野。同じ作品のなかで、ある時はあれだけの大所帯を従えて自分が主役になり、ある時はまるで室内楽のようにそれぞれの楽器と対話し、ある時はオーケストラの響きの中に包まれて演奏できる…あの魅力は他では味わえません」
今回はニコライ・ジャジューラが指揮する気鋭のキエフ国立フィルハーモニー交響楽団がそのお相手。
「分厚い豊潤な響きを得意とするスケールの大きなオーケストラだから、こちらの演奏をしっかりと受け止めてくれそうで頼もしい。そして私も彼らの個性にどう触発されるのかが楽しみ。今までとは違う自分になれそう」
まさしくそれは、様々なオーケストラと何度となく演奏している2大作品だからこそ出せる醍醐味だろう。
「チャイコフスキーはあの美しくも儚いテーマに敢えて身を任せ、ヒロインになりきって弾きます。特に第3楽章の冒頭でオーケストラによる威勢のいい序奏が流れ出すところは、私も思わず一緒に踊りたくなるような大好きな瞬間。一方でメンデルスゾーンは、葛藤を抱えて行ったり来たりしながらあの旋律に辿り着くような感じで、最初からあまり堂々と立派に弾かないようにすることで彼の作品が持つ気品が出せると思うのです。同じ協奏曲でも休憩を挟んで、そういう個性の違いを弾き分けたいと思っています」
協奏曲を挟むかたちでオーケストラによるチャイコフスキーの「くるみ割り人形」(抜粋)や「イタリア奇想曲」の演奏も。
「人気のメインディッシュ2皿を挟んで前菜もデザートも充実のメニュー、みたいなプログラム。40周年のお祝いというだけでなく、年の瀬にリッチな気分で楽しんでいただける、演目も演奏も会場も全てがゴージャスでスペシャルな公演なのです」
取材・文:東端哲也
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年12月号から)
大谷康子×キエフ国立フィル
12/18(金)19:00 弘前市民会館
問:東奥日報文化財団017-739-7390
12/19(土)19:00 サントリーホール
問:テンポプリモ03-5810-7772
12/25(金)18:45 愛知県芸術劇場コンサートホール
問:CBCテレビ事業部052-241-8118