究極のミュージカルでみせる、柚希の新たな魅力
華やかなダンスと存在感で、宝塚歌劇団星組男役トップスターとして大人気を博した柚希礼音。5月に宝塚を卒業した彼女が退団後初の舞台に選んだのが、梅田芸術劇場10周年記念作『プリンス・オブ・ブロードウェイ』。ブロードウェイ・ミュージカルの伝説的存在、ハロルド・プリンスの半生を、彼がプロデューサー&演出家として世に送り出してきた作品の名場面でつづる。
プリンスと共同演出及び振付を手がけるのは名振付家スーザン・ストローマン。キャストにもブロードウェイのミュージカル・スターが顔を揃えた、この秋話題の世界初演作だ。
7月からニューヨークで生活を始め、現地でのリハーサルに臨んだ柚希。今回の作品では、『ウエスト・サイド・ストーリー』『キャバレー』『オペラ座の怪人』などの名作群の中から、象徴的な場面が新演出、新振付で観られることとなるが、稽古場にいる柚希自身も、「全部の作品をプリンスさんが手がけられたのだと思うと、稽古が進むにつれて改めて感動します」とのこと。ストローマンについては、「すんなり気持ちよく振りが入ってくる教え方をしてくださる、プロ中のプロ。演出も兼ねているので、振りにストーリー性があって、それがとてもかわいくて。お芝居と音、双方に合っていて、総合的に責任をもって進められているなと感じますね」と語る。周囲にもキラ星のごときスターが集結しているが、「ブロードウェイの舞台で拝見してすごい! と思った方と一緒に踊ってみると、そのすごさがまたひとしおで。すばらしい方たちばかりでプレッシャーを感じたりもするのですが、その一方で皆さん本当に優しくて、英語と日本語を教え合ったり、楽しく稽古に励んでいます」と言う。お気に入りとして挙げてくれたのは、メインを務める『ブロードウェイ・ベイビー』の場面。「ダンスだけでさまざまなものを語っていくシーンで、とても楽しく踊っています」
リハーサルの合間にはジムに通ったり、舞台を観たり、ニューヨークでの生活も満喫しているよう。「ブロードウェイの舞台は、主役からアンサンブルの方まで、失敗したら食べていけないという、人生を賭けた本気さがすごくプロフェッショナルかつシビア。でも、楽しくて明るいんです。宝塚の舞台が大好きで、自分の中ではそれがすべてとなっていたのですが、新しい世界にふれて、以前の自分を反省したり。新しいものをいろいろなところから取り入れて、宝塚時代とは違う自分をお見せしたいと思っています」と語る。
「退団してすぐは、男役ではない自分をお見せすることに少し不安もありましたが、稽古が始まったら、思い切ってやってみようと吹っ切れました。もしかしたら、新しい私を気に入らない方もいるかもしれない。でも、自分自身、とても楽しく一歩を踏み出しているので、怖がることなく、新しい柚希礼音をお見せしようと思っています」と、意気込みも熱い。一流のクリエイター陣が贈る舞台で、彼女の新たな魅力にふれられる日が楽しみだ。
取材・文:藤本真由
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年11月号から)
10/23(金)〜11/22(日) 東急シアターオーブ
11/28(土)〜12/10(木) 梅田芸術劇場
問:梅田芸術劇場0570-077-039(東京) 06-6377-3800(大阪)
http://pobjp.com