An Evening with ディエゴ・エル・シガーラ(フラメンコ・カンタオール)

フラメンコ界のフランク・シナトラ、10年ぶりのステージ


 「フラメンコ」と聞くと、踊り(バイレ)やギター演奏(トケ)のイメージが強いが、これに魂の奥底から響くような深い歌声(カンテ)が加わり、三位一体となってこそが、その真髄。
 ディエゴ・エル・シガーラは、今世界で最もエキサイティングで革新的なカンタオール(男性の歌い手)のひとりであり、21世紀の音楽の海を渡る冒険家だ。かつて東方からスペイン南部のアンダルシア地方にやってきてフラメンコの発展に寄与した「ヒターノ」(いわゆるロマ)の流れを組む彼は、“フラメンコ界のフランク・シナトラ”と呼ばれる逸材で、大西洋をまたにかけて、大胆にジャンルをクロスオーヴァーすることでも賞賛を集めてきた。
 2003年にリリースした、キューバの国宝級ピアニスト、故ベボ・バルデスとのコラボ作『ラグリマス・ネグラス(黒い涙)』をはじめ、これまで4度のラテン・グラミー受賞に輝き、特にエレクトリック・ギターのディエゴ・ガルシアとの共演による最新作『トゥクマンの月のロマンセ』(13年)では、アルゼンチン・タンゴの伝統に新しい風を巻き起こしている。
 そんな彼の、05年「愛知万博」以来10年ぶりとなる来日公演がついに実現する。ラテンジャズ・サウンドを織り交ぜつつ、フラメンコ特有の妖しい魂の叫び声を通して、キューバやアルゼンチンのフォルクローレに新しい生命の火が灯される瞬間を、11月末のBunkamuraオーチャードホールでぜひ目撃して欲しい。
文:東端哲也
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年11月号から)

11/27(金)19:00 Bunkamuraオーチャードホール
問:カジモト・イープラス0570-06-9960
http://www.kajimotomusic.com