『JUDAS, CHRIST WITH SOY 〜太宰治「駈込み訴え」より〜』

躍進著しいダンサーの現在

Photo:Yoav Barel
Photo:Yoav Barel
 このところ森山未來のガチなダンサーぶりが、凄まじい。世界の一流振付家と数々の共同作業を重ね、一年間イスラエルでダンス修行してきた。本公演は今年7月に愛媛県に100年続く歌舞伎劇場・内子座でのレジデンス後に公演されたものの再演だ。
 変わったタイトルだが、原作は太宰治の短編小説『駈込み訴え』である。ユダがイエスを裏切ってローマ軍に売り渡す際にかき口説く文句を独白の形で小説にした。イエスに対するユダの愛憎相半ばするあまり、入り混じって反転しまくって、もはや告発しているんだか愛の渇望を吐露しているんだかわからない心情が揺れる。時々入る森山の関西弁が実にいいリズムを生んでいた。
 演出・美術・振付のエラ・ホチルドはインバル・ピントのカンパニーでも活躍している。複雑なコンタクトから多彩なダンスが展開され、音楽の吉井盛悟も時にダンスにかかわり、シンプルにしてジンワリくる様々な仕掛けが満載だ。自分の気持ちに翻弄され混乱する様は悲劇だが、外から見ると喜劇である。深く、熱く、そして温かい視線が全体を包んでいる。
 横浜公演は、旧マイカル本牧という元ゴージャス施設のリノベーション空間で行われる。場所の強さに負けない肉厚のダンスを堪能してほしい。
文:乗越たかお
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年9月号から) 

10/10(土)〜10/12(月・祝) 横浜・HONMOKU AREA-2(旧マイカル本牧の映画館跡)
8/23(日)発売 
問:横浜アーツフェスティバル実行委員会事務局045-663-1365