
右:上原ひろみ
2003年に世界デビューして以来、海外の一流ジャズ・ミュージシャンと世界中をツアーで回り、2011年には参加アルバムがグラミー賞を受賞。常に最前線で活躍してきたのがピアニストの上原ひろみだ。新日本フィルハーモニー交響楽団のコンサートマスター西江辰郎に厚く信頼を寄せており、ピアノ五重奏で録音された2021年のアルバムでも共演している。そんな上原と26年1月、待望の初共演が予定されているのが新日本フィルの音楽監督である指揮者・佐渡裕だ。しかも「ラプソディ・イン・ブルー」よりもピアニストにとっては演奏が大変なガーシュウィンの「ピアノ協奏曲 ヘ調」という選曲に驚かされる。上原とオーケストラの共演——しかも自作以外を演奏する機会は非常に稀なので、絶対に聴き逃がせない!
佐渡がそこに「ヘ調(in F)」という共通点をもつバルトークの「管弦楽のための協奏曲」を組み合わせてきたというのは面白い。バルトークがアメリカに移住した3年前にガーシュウィンは病死。2人が直接交流することはなかったが、実はバルトークに「管弦楽のための協奏曲」を委嘱して初演した指揮者クーセヴィツキーは、「ラプソディ・イン・ブルー」の続編に位置付けられた「セカンド・ラプソディ」の初演者でもあるのだ。佐渡が監督になって3年目というタイミングで団員一人ひとりの実力が問われる「管弦楽のための協奏曲」を選んできたのは自信の表れなのだろう。20世紀前半のアメリカで生まれた2つの傑作を堪能したい。
文:小室敬幸
(ぶらあぼ2026年1月号より)
新日本フィル 横浜特別演奏会 佐渡 裕 × 上原ひろみ
2026.1/30(金)19:00 横浜みなとみらいホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815
https://www.njp.or.jp

小室敬幸 Takayuki Komuro
1986年、茨城県出身。東京音楽大学で作曲を学んだ後、同大学院では音楽学を専攻。修了後は大学の助手と非常勤講師を経て、現在は音楽ライター。クラシック音楽、現代音楽、ジャズ、映画音楽を中心に演奏会やCDの曲目解説、雑誌やWEBメディアにインタビュー記事を執筆。また、現在進行形のジャズを紹介するMOOK『Jazz The New Chapter』にも寄稿している。共著に『聴かずぎらいのための吹奏楽入門』『ピアノへの旅』。


