
日本を代表する音楽家を輩出し続けている「日本音楽コンクール」。2024年の第93回では栗原壱成がヴァイオリン部門第1位、南ことこがピアノ部門第3位に入賞。高い技術はもちろん、聴く者を魅了する表現力が評価されたふたりによる特別なアンサンブルが、ヨコスカ・ベイサイド・ポケットで聴くことができる。バッハからベートーヴェン、パガニーニ、そしてイザイにヤナーチェクと幅広いレパートリーから組まれたプログラムだ。
栗原「私が基本的な部分を作り、最終的に南さんにバランスを整えていただく感じで決めたプログラムです。とくにベートーヴェンのソナタ第1番はオーストリアでレッスンを受けたり、コンクールで演奏したりと思い出深い作品でもあります。若いベートーヴェンならではのパッション、モーツァルトの影響といったものが融合していて弾くたびに感動しています。そしてパガニーニやイザイはやはりヴァイオリニストにとっては大切な作品で、ぜひ今回も演奏したいと思いました」
南「バッハの作品は最近弾くようになったのですが、実は以前はすこし苦手意識がありました。ただ、今回演奏する『パルティータ第2番』をきっかけにどんどん好きになっていったのです。もともとラフマニノフの作品がすごく好きでよく取り組んでいたのですが、色々な作品を勉強したいと思っているので、そういった意味でも今回はあえてバッハを選びました」
地元・横須賀出身の栗原は桐朋学園大学のソリスト・ディプロマ・コースに、南は同大学の修士課程にそれぞれ在籍しているが、面識などはあったのだろうか。
栗原「ご一緒するのは今回がはじめてですね。お目にかかったのは表彰式の時がはじめてで、そのあと南さんのコンサートを聴かせていただき、音楽に真摯に向き合う姿にすごく感銘を受けました。共演させていただくベートーヴェンやヤナーチェクのソナタでどんな音色を奏でてくださるかとても楽しみです」
南「ヤナーチェクはピアノソロでも弾く機会がなかったのですが、チェコの民謡の要素、リズム感がとても新鮮で、演奏していて引き込まれるものがあります。またベートーヴェンは先日栗原さんがお越しくださったコンサートでも後期のピアノ・ソナタを演奏して、改めてその素晴らしさを感じているところでした。今回は初期の作品なので、また違った魅力があると思います」
これからの音楽界を牽引していく注目の若手奏者ふたりの共演による多彩なプログラムは、多くの音楽ファンを魅了することであろう。
取材・文:長井進之介
(ぶらあぼ2025年12月号より)
フレッシュ・アーティスツ from ヨコスカ シリーズ68
栗原壱成 & 南 ことこ デュオ・リサイタル
2025.12/7(日)14:00 ヨコスカ・ベイサイド・ポケット
問:横須賀芸術劇場046-823-9999
https://www.yokosuka-arts.or.jp

長井進之介 Shinnosuke Nagai
国立音楽大学大学院修士課程器楽専攻(伴奏)修了を経て、同大学院博士後期課程音楽学領域単位取得。在学中、カールスルーエ音楽大学に交換留学。アンサンブルを中心にコンサートやレコーディングを行っており、2007年度〈柴田南雄音楽評論賞〉奨励賞受賞(史上最年少)を機に音楽ライターとして活動を開始。現在、群馬大学共同教育学部音楽教育講座非常勤講師、国立音楽大学大学院伴奏助手、インターネットラジオ「OTTAVA」プレゼンターも務める。
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