INTERVIEW エリザヴェータ・ウクラインスカヤ——仙台国際・ピアノ部門の覇者が初の東京リサイタル!

十八番の「展覧会の絵」を軸に、母国の傑作を披露

 3年ごとに開催される、課題曲が協奏曲中心の仙台国際音楽コンクール。今年の6月に行われた第9回のピアノ部門では、ロシアのエリザヴェータ・ウクラインスカヤが第1位および聴衆賞(セミファイナル開催日ごとに投票で決定、計3名)を受賞。それを記念したリサイタルが浜離宮朝日ホールで行われる。コンクールでのエピソード、リサイタルへの意気込みなどを聞いた。

「仙台国際音楽コンクールはオーケストラと協奏曲を3曲演奏する機会があります。特に、ひとつのコンクールでモーツァルトのコンチェルトを2曲も演奏できるということに興奮しました。実際に仙台フィルハーモニー管弦楽団と指揮の高関健さんとの初めてのリハーサルでは、音楽家としてのこの上ない幸福を味わいました。音楽を通してあらゆることをお互いに共感しあうことができたのです。実はあれからコンクールのビデオをしばしば見直して、幸せな時間だった…とひしひしと感じています。こうした経験は滅多にないことで、本当に感謝しています」

 コンクールでモーツァルトやドビュッシー、リストにチャイコフスキーを演奏したウクラインスカヤは、今回のリサイタルではプロコフィエフにラフマニノフ、ムソルグスキーというロシアものでまとめたプログラムを披露する。非常に幅広いレパートリーをもつピアニストだ。

「とくにフランスとロシアの音楽をたくさん演奏しますが、お気に入りの作曲家はムソルグスキーです。今回演奏する彼の『展覧会の絵』は、このプログラムではもちろんのこと、私の人生でも中心的存在です。10年以上弾いてきたのですが、曲集のクライマックスとなる部分は、最も静かな曲である〈死せる言葉による死者への呼びかけ〉(第8曲:カタコンブの後半部分)だと考えています。それを知れば、聴き方も弾き方もまったく違ってきます。今回、日本でとても人気のこの作品を私の解釈で皆さんとシェアできることがとても嬉しいです。そしてプロコフィエフとラフマニノフは同じ時代を生きながら、全く異なる体験をしていました。私はそれを今回示したいと考えています」

 コンクールのファイナルでモーツァルトの協奏曲(K.467)を演奏した際は、自作のカデンツァを披露したことも話題となった。作曲は今後も続けたいという。

「作曲以外にも、現在は母校で指導を行っており、指揮にも関心を持っています。これらは演奏に対して全く異なる視点を与えてくれるのです。音楽がどのように生まれ、どのようなメカニズムになっているかを知ると、作曲家が書いたテキストにもっと注意を払えるようになります。作曲については、いつかすべてのモーツァルトの協奏曲のカデンツァを書き、演奏したいと思っています」

 最後に、初めてとなる東京でのリサイタルへの意気込みを尋ねた。

「コンクールをきっかけに私は心から日本が大好きになり、すでに日本がとても恋しいです! 初めての東京訪問にもワクワクしています。浜離宮朝日ホールの評判はすでに国内外の様々な方から伺っており、まるで友人に会うような気分です。あたたかく、愛情深い日本の観客の皆さんにまた会えるのをとても楽しみにしています」

取材・文:長井進之介

第9回仙台国際音楽コンクール優勝記念
エリザヴェータ・ウクラインスカヤ ピアノリサイタル
2025.12/17(水)19:00 浜離宮朝日ホール


♪曲目
プロコフィエフ:「シンデレラ」からの10の小品 op.97
ラフマニノフ:楽興の時 op.16
ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」

問:仙台市市民文化事業団音楽振興課022-727-1872
https://simc.jp


長井進之介 Shinnosuke Nagai

国立音楽大学大学院修士課程器楽専攻(伴奏)修了を経て、同大学院博士後期課程音楽学領域単位取得。在学中、カールスルーエ音楽大学に交換留学。アンサンブルを中心にコンサートやレコーディングを行っており、2007年度〈柴田南雄音楽評論賞〉奨励賞受賞(史上最年少)を機に音楽ライターとして活動を開始。現在、群馬大学共同教育学部音楽教育講座非常勤講師、国立音楽大学大学院伴奏助手、インターネットラジオ「OTTAVA」プレゼンターも務める。
X(旧Twitter) https://x.com/Shinno1102
Instagram https://www.instagram.com/shinno_pf/