東京シティ・フィルが2026-27シーズンラインナップを発表

 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団が10月31日、2026-27シーズン(26年4月~27年3月)のプログラムを発表した。常任指揮者・高関健と、首席客演指揮者・藤岡幸夫を中心に、東京オペラシティ コンサートホールでの定期演奏会(全9回)をはじめ、全13公演を開催する。
 新シーズンは、東京オペラシティ コンサートホールの休館(26年1月~6月末)に伴い、定期演奏会は7月からスタート。また、ティアラこうとうの大規模改修のため、「ティアラこうとう定期演奏会」は休止。それに代わり、すみだトリフォニーホールでの特別シリーズ(全3公演)が開催される。

高関健 ©K.Miura

 12季目となる高関は定期演奏会に4回登壇。注目は、27年3月定期で披露するマーラーの交響曲第3番。マーラーの交響曲は、これまでに9番、5番、7番、1番、今季の2番&6番と近年継続して取り組んでいる、このコンビを語るうえで外せない重要なレパートリー。緻密な楽曲分析と、それに基づいた精緻な表現で知られる高関が、マーラー作品の中でも屈指の規模を誇る第3番でどのような世界観を構築するのだろうか。

 7月には、2026年に生誕120年を迎えるショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1&2番(独奏:荒井英治/特別客演コンサートマスター)、没後30年の武満徹「ア・ウェイ・ア・ローンII」を取り上げる。高関&荒井のコンビは今年8月に名古屋フィルでもショスタコーヴィチの2作品を披露しており、ホームグラウンドではさらなる熱演を繰り広げてくれそうだ。
 武満作品は、10月定期でも「夢の時」が予定されており、録音経験のある高関が、作品の持つ深い世界観を描き出すだろう。
 その10月定期では、武満の他、プロコフィエフのピアノ協奏曲第2番(独奏:奥井紫麻)、ムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」(ラヴェル編)を、27年1月の定期ではストラヴィンスキー「火の鳥」(1910年原典版)と、ロシア作品にも注力する。

 また、すみだトリフォニーホールでの特別シリーズの初回は、没後50年のブリテンの代表作「戦争レクイエム」。今年の《ドン・カルロ》(演奏会形式)でも共演した木下美穂子(ソプラノ)をはじめ、独唱陣には宮里直樹(テノール)、大西宇宙(バリトン)という実力派を迎える。

藤岡幸夫 ©K.MIura

 藤岡は定期演奏会に2回登壇。
 目を引くのは12月定期の冨田勲「源氏物語幻想交響絵巻」。『源氏物語』をベースに作曲された約90分の大作で、オーケストラに加え、京ことばの朗読、琵琶、箏、龍笛、篳篥などの和楽器やミュージック・コンクレートも登場する。日本人作品の紹介に力を注ぐ藤岡はこの作品を、現在総監督を務める関西フィルで2015年に指揮しており、没後10年を迎える2026年に満を持して再演する。
 8月定期では、こちらも関西フィルで初演した菅野祐悟のチェロ協奏曲「十六夜」を初演時のソリスト宮田大とともに再演。イギリスの作曲家フレデリック・ディーリアスの「夏の庭で」、メインにシベリウスの交響曲第2番を据える。

 客演陣では、6月に登場する鈴木秀美がC.P.E.バッハのシンフォニア ヘ長調 Wq.183-3、
ハイドンの交響曲第82番「熊」、モーツァルトの交響曲第41番を披露。近年共演を続ける鈴木のタクトから、古典派の萌芽から成熟までの移り変わりを感じさせるような演奏が導かれるはずだ。
 9月定期に登場するリオ・クオクマンは「ローマの松」など、没後30年のレスピーギを核としたプログラムを、11月定期では原田慶太楼が、20世紀アメリカの作曲家ファーディ・グローフェの代表作である組曲「グランド・キャニオン」などを取り上げる。

 2025年の楽団創立50周年から新たな一歩を踏み出すシーズン。高関&東京シティ・フィルの活躍に注目したい。

©大窪道治

東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
https://www.cityphil.jp