
藤木大地 ©hiromasa/桂 米團治
大晦日、大好きなコンサートホールに出向き、豪華な出演者による音楽をゆっくり聴きながら、1年を回想し締め括る幸せは、何にも代えがたいものがある。そのために、家の大掃除や、おせちの準備も早めに済ませ、日本有数の劇場・びわ湖ホールに、ちょっぴりオシャレをして出かけてみる。1年間頑張った自分への、ささやかなご褒美なのだ。1998年の開館以来、毎年欠かさず大晦日に「ジルヴェスター・コンサート」を開催してきたびわ湖ホールでは、コロナ禍の2020年からは、新年を迎えるカウントダウンの年越しスタイルは取り止め、来場しやすい昼のマチネ開演に変更。それにより、ジルヴェスターのスペシャル感はそのままに、家でゆったり、『紅白歌合戦』から『ゆく年くる年』の寛ぎタイムも味わえると好評なのだ。
マチネ開催に変わっても、コンサートのクオリティは変わらずに高い。今年の指揮者は、昨年に続きびわ湖ホール芸術監督の阪哲朗で、オーケストラは今年創立45周年を迎えた大阪交響楽団。豪華ゲストの中で最初に紹介するのは、「ジルヴェスター・コンサート」初出演となる、ご当地大津出身のピアニスト久末航。2025年「エリザベート王妃国際音楽コンクール」で第2位を受賞し、音楽界を賑わせている若き俊英の凱旋公演でもあるのだ。難曲、ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番を携えての登場に、久末の本気度が垣間見える。さらに、共にびわ湖ホール所縁のオペラ歌手で、国際的ディーヴァ、ソプラノの中嶋彰子と、日本を代表するカウンターテナーの藤木大地が、オペレッタの金字塔、J.シュトラウスⅡ世《こうもり》のハイライトを、びわ湖ホール声楽アンサンブルのメンバーと共に歌い演じる。今年7月、レハールのオペレッタ《メリー・ウィドウ》を大成功へと導いた、ウィーン仕込みの指揮が冴え渡る阪哲朗マエストロと、びわ湖ホール声楽アンサンブルのメンバーたち、そしてジルヴェスター合唱団が《こうもり》に挑むというのだから、これは楽しみだ。中嶋はジーツィンスキー〈ウィーン、わが夢の街〉やカールマン《チャールダッシュの女王》より〈ハイヤー山こそわが故郷〉、藤木はヴォーン=ウィリアムズ「旅の歌」の第7曲なども歌ってくれる予定だ。
他にも、お馴染みのジルヴェスター・ファンファーレ隊は、デュカスの「ラ・ペリ」のファンファーレで大活躍。小中学生のジルヴェスター・ユース合唱団は、びわ湖ホール声楽アンサンブルと合唱の名曲「Believe」を届けてくれる。司会を務めるのは、クラシック音楽をこよなく愛する落語家・桂米團治。今年も彼の名調子が、コンサートを盛り上げてくれるに違いない。豪華賞品が当たる抽選会も、来場者にとって楽しみのひとつ。しかし、それだけではない。ホールホワイエから望む琵琶湖や比良の山並みなどの美しい景色は、1年の疲れをきっと癒してくれることだろう。チケットは早めの確保が鉄則。忙しさに紛れ、すぐに大晦日はやって来るのだから。
文:磯島浩彰
(ぶらあぼ2025年11月号より)
びわ湖ホール ジルヴェスター・コンサート 2025
2025.12/31(水)15:00 びわ湖ホール 大ホール
問:びわ湖ホールチケットセンター077-523-7136
https://www.biwako-hall.or.jp/

