
『ぶらあぼ』誌面でご好評いただいている海外公演情報を「ぶらあぼONLINE」でもご紹介します。
[以下、ぶらあぼ2026年1月号海外公演情報ページ掲載の情報です]
曽雌裕一 編
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ヨーロッパの4月は「復活祭」も重要だが、もう一つ、白アスパラ(ドイツ語ではSpargel(シュパーゲル))の始まる季節でもある。シュパーゲル好きであれば、音楽とは別に、これを楽しみに渡欧するのも大きな楽しみとなろう。
さて、まずは3月から続く「復活祭音楽祭」。さすがに、4月半ば以降にスタートするシュパーゲルの季節には間に合わないが、先月号でもご紹介したとおり、「ザルツブルク復活祭音楽祭」では、ペトレンコ指揮ベルリン・フィルによるワーグナー「ラインの黄金」、マーラーの「千人の交響曲」、ソヒエフ指揮によるベルリオーズ「幻想交響曲」、ハーディング指揮のハイドン「天地創造」など楽しみな演目が並ぶ。「フェストターゲ」(ベルリン州立歌劇場)では、ティーレマン指揮のR.シュトラウス「ばらの騎士」やネトレプコ出演のヴェルディ「仮面舞踏会」、「バーデン=バーデン復活祭音楽祭」では、マルヴィッツ指揮マーラー室内管演奏のワーグナー「ローエングリン」やブリテンの「戦争レクイエム」、マケラ指揮コンセルトヘボウ管のマーラーやブルックナーなど、こちらも魅力あるラインナップだが、どの音楽祭も公演日がほぼ同じなので、そこは何とも痛し痒しだ。また、これ以外でもフランスの「エクサン・プロヴァンス復活祭音楽祭」やイタリアの「フィレンツェ五月音楽祭」なども注目公演だらけ。特に後者ではメータがマーラーの「大地の歌」やベートーヴェン「第九」を振る。
通常公演では、復活祭の時期は特にドイツ語圏でワーグナー「パルジファル」の公演が多い。ウィーン国立歌劇場(フォークト出演)、ベルリン・ドイツ・オペラ(ペルトコスキ指揮)、ドレスデン・ゼンパーオーパー(ガッティ指揮)、バイエルン州立歌劇場(ヴァイグレ指揮)などで公演がある。また、その他のワーグナー公演も多い。特に注目は、ハンブルク州立歌劇場の「ローエングリン」(コンヴィチュニー演出)、ケルン歌劇場の「ワルキューレ」(アルブレヒト指揮)、フランクフルト歌劇場の「トリスタン」(グックアイス指揮)、英国ロイヤル・オペラの「ジークフリート」(シャーガー出演)、メトロポリタン歌劇場の「トリスタン」(ダヴィドセン出演)など多士済々だ。
ワーグナーばかりで失礼してしまったが、ワーグナー以外の注目公演に目を向けると、アン・デア・ウィーン劇場のL.ヴィンチ「インドのアレッサンドロ」、ベルリン・ドイツ・オペラのヘンデル「ジュリオ・チェーザレ」、ハンブルク州立歌劇場のツェムリンスキー「フィレンツェの悲劇」他、フランクフルト歌劇場のプッチーニ「トゥーランドット」、ミラノ・スカラ座のドビュッシー「ペレアスとメリザンド」、フィレンツェ五月音楽祭のJ.アダムズ「クリングホファーの死」、パリ・オペラ座(ガルニエ宮)のP.グラス「サティアグラハ」、オランダ国立オペラのヴァインベルク「パサジェルカ」、メトロポリタン歌劇場のサーリアホ「イノセンス」など、古楽から現代まで様々なプレミエ公演が続く。もちろん、古楽系のファンに限らず、チューリヒ歌劇場のモーツァルト「皇帝ティートの慈悲」(ミンコフスキ指揮)、ヤーコプス指揮のヴィヴァルディ「ジュスティーノ」(フライブルク・バロック管)などは見逃せないだろう。また、フランス語版のドニゼッティ「ランメルモールのルチア」(パリ・オペラ・コミーク)というのも面白い。ベルクの「ヴォツェック」をウェルザー=メストが振るのも興味深い(ウィーン国立歌劇場)。
オーケストラでは、久々ウィーン・フィルを振るラトル指揮のマーラー交響曲第9番、マルヴィッツ指揮のミュンヘン・フィル、ケント・ナガノ指揮チューリヒ・トーンハレ管のメシアン「トゥーランガリラ交響曲」の他、98歳のブロムシュテットがベルリン・フィルとライプツィヒ・ゲヴァントハウス管でブルックナーを振るのはもはや驚異でしかない。
なお、本文ではなかなか取り上げられないピアノの名匠グリゴリー・ソコロフは、4月中はドイツ国内を回っているので、シュパーゲルも目当てにしながらドイツ旅行を検討するのもありかもしれない。日程は https://www.grigory-sokolov.net/concerts を参照。
(曽雌裕一・そしひろかず)
(コメントできなかった注目公演も多いので本文の◎印をご参照下さい)

