
右:ヴィクトリア・ムローヴァ ©Benjamin Ealovega
紀尾井ホール室内管弦楽団(KCO)の11月の第145回定期演奏会は、東京オペラシティのコンサートホールで行われる。
指揮は、これがKCOへのデビューとなるイギリスのダンカン・ウォード。ベルリン・フィルのカラヤン・アカデミーで学び、ロンドン交響楽団やドレスデン国立歌劇場管弦楽団などを指揮した経験をもち、2021年から南オランダ・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者をつとめる、期待の新鋭だ。
曲目はブリテン、ベルク、ブラームスのオール「B」プログラム。はじめに、来年没後50年を迎えるブリテンの代表作、歌劇《ピーター・グライムズ》からの、「4つの海の間奏曲」が演奏される。人の心の反映のような海の情景を、どのように描き出してくれるだろうか。
続いては、そのブリテンが多大な影響を受け、自らもヴァイオリン協奏曲を作曲するきっかけとなった、ベルクのヴァイオリン協奏曲。ソリストは1982年のチャイコフスキー・コンクール優勝以来、華やかなキャリアを築いてきたヴィクトリア・ムローヴァだ。来日公演も数多いが、この名曲を日本で演奏するのは、意外にも初めてという。オーケストラとの緊密な対話が重要な作品だけに、大きすぎないKCOとの共演は嬉しい。
締めはブラームスの人気作、交響曲第1番。これもベルク同様、大編成で力まかせに鳴らすのではない、俊敏さと明瞭で美しい響きによって聴かせてくれることだろう。
文:山崎浩太郎
(ぶらあぼ2025年10月号より)
ダンカン・ウォード(指揮) 紀尾井ホール室内管弦楽団 第145回 定期演奏会
2025.11/21(金) 19:00、11/22(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
9/19(金)発売
問:紀尾井ホールウェブチケット webticket@kioi-hall.or.jp
https://kioihall.jp

山崎浩太郎 Kotaro Yamazaki
1963年東京生まれ。演奏家の活動と録音をその生涯や同時代の社会状況において捉えなおし、歴史物語として説く「演奏史譚」を専門とする。著書は『演奏史譚1954/55』『クラシック・ヒストリカル108』(以上アルファベータ)、片山杜秀さんとの『平成音楽史』(アルテスパブリッシング)ほか。
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