【SACD】ブラームス:交響曲第3番/ジョナサン・ノット&東響

 これぞノット&東響のライブ感。ノットは古典的名曲ではオケに予想外の刺激を与え続け、“経験則で合わせる”ことを最大限排除してきた。この「3番」は殊に強烈で、1小節たりとも予定調和にならぬよう、テンポ、アーティキュレーション、奏法を変化させ続ける。それは特に両端楽章に顕著だが、東響はノットの即興性ある棒に食らいつき、緊張と活力が生み出される。低弦の下降跳躍音型の表情付けなどニュアンスも多彩。近年屈指のユニークなブラームスの後、正攻法のマーラー「花の章」の癒し効果たるや。両曲とも1880年代の作で、当時の大家と新進作曲家の対比も面白い。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2025年10月号より)

【information】
SACD『ブラームス:交響曲第3番/ジョナサン・ノット&東響』

ブラームス:交響曲第3番
マーラー:花の章

ジョナサン・ノット(指揮)
東京交響楽団

収録:2022年5月、東京オペラシティ コンサートホール 他(ライブ)
オクタヴィア・レコード
OVCL-00883 ¥3850(税込)


林 昌英 Masahide Hayashi

出版社勤務を経て、音楽誌制作と執筆に携わり、現在はフリーライターとして活動。「ぶらあぼ」等の音楽誌、Webメディア、コンサートプログラム等に記事を寄稿。オーケストラと室内楽(主に弦楽四重奏)を中心に執筆・取材を重ねる。40代で桐朋学園大学カレッジ・ディプロマ・コース音楽学専攻に学び、2020年修了、研究テーマはショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲。アマチュア弦楽器奏者として、ショスタコーヴィチの交響曲と弦楽四重奏曲の両全曲演奏を達成。