初来日!ルーマニアのヴァイオリニスト、ディアナ・ジパが奏でるエネスク

左:ステファン・ドニガ 右:ディアナ・ジパ

 ルーマニアの生んだ無二の大音楽家、ジョルジェ・エネスク(エネスコ)。没後70年の今年、その作品の本質を伝えるべく、ルーマニア出身のヴァイオリニスト、ディアナ・ジパが初来日を果たす。

 ブカレストを中心に活動するジパの演奏は、多くの動画で確認できるが、とにかく驚くほど上手い。濃厚でありながら澄み切った美音、メロディを隙なく歌い込む歌心とそれを実現する両手の堅実な技術、楽曲に深く入り込む集中力。間違いなく一聴に値する名手だ。ピアノは彼女の動画の多くで共演するステファン・ドニガで、デュオとしての完成度も万全。

 プログラムはポルムベスク「望郷のバラード」、バルトーク「ルーマニア民族舞曲」などを配する民族色濃厚な名曲集。やはり注目は大枠に置かれたエネスクの2曲で、美しい逸品「協奏的即興曲」、ファンタジーとエネルギーの詰まったヴァイオリン・ソナタ第3番という最高の選曲。エネスクやルーマニアに関心のある方、ヴァイオリンを愛する方はチェックしてほしい。

文:林 昌英

(ぶらあぼ2025年9月号より)

ディアナ・ジパ ヴァイオリンリサイタル ジョルジェ・エネスク没後70周年記念
2025.10/17(金)19:00 東京/南大沢文化会館 主ホール
10/18(土)14:00 東京/サローネ・フォンタナ

10/19(日)14:00 神奈川/高津市民館
問:Asterism music@asterism.tokyo 
https://asterism.tokyo


林 昌英 Masahide Hayashi

出版社勤務を経て、音楽誌制作と執筆に携わり、現在はフリーライターとして活動。「ぶらあぼ」等の音楽誌、Webメディア、コンサートプログラム等に記事を寄稿。オーケストラと室内楽(主に弦楽四重奏)を中心に執筆・取材を重ねる。40代で桐朋学園大学カレッジ・ディプロマ・コース音楽学専攻に学び、2020年修了、研究テーマはショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲。アマチュア弦楽器奏者として、ショスタコーヴィチの交響曲と弦楽四重奏曲の両全曲演奏を達成。