近年、作曲家としてのみならず指揮者としても存在感を増している杉山洋一の活躍ぶりを記録した一枚だ。クセナキス「ジョンシェ」はマスとして把握されたオーケストラが暴力的なエネルギーを発散する。半世紀近く前の作品だが、この作曲家の脂の乗った筆運びがヴィヴィッドに伝わってきた。一柳慧の遺作「ヴァイオリンと三味線のための二重協奏曲」は独奏楽器の瞑想的な対話に始まり、後半は彼のトレードマークとも言うべきミニマリズムとなり疾走する。パンデミック下に作曲された杉山の「自画像」は、各種の政治紛争が、該当国の国歌を引用しながら、一種のカオスのように描写される。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2025年9月号より)
【information】
CD『クセナキス、一柳慧、杉山洋一:管弦楽作品集/杉山洋一&都響&N響&新日本フィル』
クセナキス:ジョンシェ(藺草が茂る土地)〜109の楽器のための/一柳慧:ヴァイオリンと三味線のための二重協奏曲/杉山洋一:自画像〜オーケストラのための
杉山洋一(指揮)
東京都交響楽団
NHK交響楽団
新日本フィルハーモニー交響楽団
金川真弓(ヴァイオリン) 本條秀慈郎(三味線)
収録:2021年8月、サントリーホール 他(ライブ)
NEOS/東京エムプラス
NEOS 12513 ¥オープン価格



