今年は九州交響楽団が初登場!国内最大級のオーケストラの祭典
夏の川崎の風物詩、「フェスタサマーミューザ KAWASAKI 2025」が7月26日から8月11日にかけて開催される。中心となるのは首都圏の各オーケストラの競演。今年は福岡から九州交響楽団も招かれる。さらに子どもたちに人気の小川典子「イッツ・ア・ピアノワールド」(8/3)、徳岡めぐみ(パイプオルガン)と歌手陣による「真夏のバッハⅩ」(8/3)、宮本貴奈(ピアノ)らによる「サマーナイト・ジャズ」(8/10)など、多彩なラインナップがそろう。

まず注目公演に挙げたいのは、ミューザ川崎を本拠地とする東京交響楽団によるオープニングコンサート(7/26)とフィナーレコンサート(8/11)。オープニングでは音楽監督としてラストシーズンを迎えるジョナサン・ノットが、ワーグナー(マゼール編)の《ニーベルングの指環》管弦楽曲集「言葉のない『指環』」他を指揮する。神々の世界を描いた超大作オペラをコンサート用に凝縮した名編曲だ。フィナーレでは正指揮者の原田慶太楼がニールセンの交響曲第4番「不滅」を中心に意欲的なプログラムを披露する。輝かしく高揚感あふれる「不滅」は音楽祭の掉尾を飾るにふさわしい。服部百音の独奏によるバルトークのヴァイオリン協奏曲第2番も聴きもの。
九州交響楽団(8/7)を指揮するのは、若き首席指揮者、太田弦。昨年の首席指揮者就任記念公演でもとりあげたショスタコーヴィチの交響曲第5番をメインに、九響が世界初演した小出稚子「博多ラプソディ」他を組み合わせる。新時代を迎えた九響サウンドやいかに。
日本期待の若きマエストロたち
今年は若手指揮者たちの活躍が目立つ。NHK交響楽団(8/4)は気鋭、松本宗利音(しゅうりひと)を抜擢。チャイコフスキーの「イタリア奇想曲」、メンデルスゾーンの交響曲第3番「スコットランド」という旅から生まれた名曲を組み合わせる。ガーシュウィンの「ラプソディー・イン・ブルー」では阪田知樹の鮮烈なソロを期待。

東京都交響楽団(7/30)は、ハノーファー州立歌劇場第2カペルマイスターとして経験を積む熊倉優と共演する。ストラヴィンスキーの組曲「火の鳥」(1919年版)や、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番(独奏:奥井紫麻)など、ロシアの作曲家たちの名曲を集める。熊倉が名手ぞろいの都響からどんなサウンドを引き出してくれるのか、楽しみだ。
東京フィル(8/6)を指揮するのは出口大地。こちらも勢いのある俊英だ。東京フィルとはすでに数多く共演を重ね、気心の知れた間柄だろう。ベートーヴェンの交響曲第7番で会場を熱狂させるにちがいない。
中堅では読響(7/31)と共演する小林資典(もとのり)に注目したい。ドルトムント市立歌劇場の音楽総監督代理と第1指揮者を務め、欧州での実績は十分。読響との相性も上々だ。リヒャルト・シュトラウスの歌劇《ばらの騎士》組曲で持ち味を発揮する。

ベテラン勢も健在だ。高関健指揮東京シティ・フィル(7/27)によるマーラーの交響曲第1番「巨人」、上岡敏之指揮新日本フィル(8/2)によるブルックナーの交響曲第7番(ハース版)、沼尻竜典指揮神奈川フィル(8/8)によるメシアンの「トゥランガリーラ交響曲」、下野竜也指揮日本フィル(8/9)によるドヴォルザークの交響曲第8番など、いずれも聴きごたえのあるプログラムだ。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2025年7月号より)

飯尾洋一 Yoichi Iio
音楽ジャーナリスト。著書に『クラシックBOOK この一冊で読んで聴いて10倍楽しめる!』新装版(三笠書房)、『クラシック音楽のトリセツ』(SB新書)、『マンガで教養 やさしいクラシック』監修(朝日新聞出版)他。音楽誌やプログラムノートに寄稿するほか、テレビ朝日「題名のない音楽会」音楽アドバイザーなど、放送の分野でも活動する。ブログ発信中 http://www.classicajapan.com/wn/


