佐々木亮が語る、ヴィオラスペース2025の聴きどころ

 5月23日から開催される第6回東京国際ヴィオラコンクール。その審査委員長を今回務める佐々木亮に同コンクールについてきいた。

 「課題曲には各コンクールの傾向が出ますが、東京国際ヴィオラコンクールが今まで培ってきた特色を尊重した上で決めました。すべて、ヴィオラ弾きなら通らなければならない王道レパートリーです」

 第1次審査でバッハの無伴奏チェロ組曲、第2次審査でヒンデミットの無伴奏ソナタ、セミ・ファイナルで今井信子編曲のブリテンの無伴奏チェロ組曲、ホフマイスターかシュターミッツのヴィオラ協奏曲、そしてファイナルで、ブラームスの三重奏曲作品114、バルトークのヴィオラ協奏曲などが課せられる。

 「バッハについては、スタイル(演奏様式)に拘るよりも、中身があるかどうかが問題です。ブリテンの無伴奏組曲は、今井先生が編曲されたその功績を知っていただきたいと思いました。ホフマイスターとシュターミッツの協奏曲はどこのオーケストラのオーディションでも弾く曲で、その人の音楽性、スタイルに対する考え、技術、すべてがわかってしまいます。それを指揮者なしで弾き振りしていただきます。ヴィオラは、ソロの楽器というより人と弾く楽器ですから、室内楽曲でブラームスの三重奏曲も入れました。バルトークの協奏曲は今の若い人がどう弾くのかが楽しみです」

 また、佐々木は同時開催となるヴィオラスペース公演のプログラミング・ディレクターも務める。東京で2夜にわたって行われるガラ・コンサートについてもきいた。

 「1日目は生誕130年のヒンデミットに焦点をあてました。彼は教育を重視していた人で、『教育音楽』を書きました。弦楽器の第1ポジションだけで弾ける曲で、学び始めた人でも音楽の喜びが味わえるようになっています。審査委員が分担して、子どもたちのオーケストラと一緒に弾きます。ヒンデミットのユーモアが炸裂する『ミニマックス』では、篠崎史紀さんがその面白さをお客様にわかるように示してくださるでしょう。今井先生にはシュニトケの『モノローグ』を演奏していただきます。

 2日目は、ヴィオラを奏で、ヴィオラを愛する作曲家の作品を集めました。ロージャは『ベン・ハー』などの映画音楽で有名ですが、純音楽が本業で、彼と同じハンガリー出身のマテ・スーチュさんに弾いていただきます。私が演奏するヴィエニャフスキの『夢』は、この作曲家が、ヨアヒムらと弦楽四重奏を弾いたときにヴィオラを受け持ったのがきっかけで書いた曲です」

 コンクールとガラ・コンサートを合わせて聴けば、若手からベテランまで、スタンダードからレア曲まで、存分にヴィオラ音楽を堪能できる。

取材・文:山田治生
(ぶらあぼ2025年5月号より)

ヴィオラスペース2025 vol.33 第6回東京国際ヴィオラコンクール
2025.5/23(金)〜6/1(日) 桐朋学園大学・調布キャンパス、桐朋学園宗次ホール、日本製鉄紀尾井ホール
ガラ・コンサート
5/28(水)、5/30(金)各日19:00 日本製鉄紀尾井ホール
入賞記念ガラ・コンサート
6/3(火)19:00 大阪/ザ・フェニックスホール
6/5(木)19:00 宮城野区文化センターPaToNaホール

問:東京国際ヴィオラコンクール運営事務局03-6418-8617
https://tivc.jp
※コンクールおよび公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。