2025年1月の海外公演情報

Wiener Staatsoper Photo by Dimitry Anikin on Unsplash

『ぶらあぼ』誌面でご好評いただいている海外公演情報を「ぶらあぼONLINE」でもご紹介します。
[以下、ぶらあぼ2024年10月号海外公演情報ページ掲載の情報です]

曽雌裕一 編

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 本文とは関係ないが、届いたばかりの独Opernwelt誌9月号に、二期会が1ページを割いて「Tokyo Opera Days 2024」と題する広告を掲載している。国立能楽堂での能狂言公演と東京文化会館でのコンヴィチュニー演出によるR.シュトラウス「影のない女」を組み合わせた企画。海外のオペラ・ファンにどうアピールしてインバウンドを取り込むのか興味津々だ。

 さて、1月はベルリンで「ウルトラシャル」という恒例の現代音楽祭が開催される。本文中に紹介した限りでは、ベルリン・ドイツ響の2公演とベルリン放送響の1公演がそれに当たる。現代音楽に興味のない方には申し訳ないが、ヨーロッパの音楽潮流を知る上では注目すべきイベントと言えよう。これと同じ流れというわけではないが、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管で、パッパーノの指揮、レヴィットのピアノで、1904年に完成されたブゾーニのピアノ協奏曲が取り上げられる。この曲は全5楽章70分に及び、終楽章では男声合唱まで加わるという大作だが、なぜか最近、実演で取り上げられることが多い。2024年中に本稿で取り上げた公演だけでも6公演もある。ブゾーニのピアノ協奏曲、謎の大ブームだ。

 もう一つ、2025年は、現代音楽界に巨大な軌跡を残したレジェンド、ピエール・ブーレーズの生誕100年に当たっている。そのため、1月の公演中にもブーレーズへのオマージュを謳ったものが多く、SWR響やフランス国立管、フィルハーモニー・ド・パリでのアンサンブル・アンテルコンタンポラン(1月6日)をはじめとして、マケラ=パリ管、ラトル=ロンドン響などでもブーレーズが多数取り上げられる。

 一方、年初恒例のニューイヤー・コンサートでは、ムーティ指揮によるウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートは特別な公演としても、2025年はそれほど奇をてらった玄人好みの公演は見当たらないようだ。むしろ、マルヴィッツ指揮のベルリン・コンツェルトハウス管、シュテンツ指揮のケルン・ギュルツェニヒ管、ホーネック指揮のケルンWDR響、ノット指揮のスイス・ロマンド管、アルティノグリュ指揮のモネ劇場響、ネトピル指揮のチェコ・フィルなど、華やかで、いかにも楽しそうな管弦楽名曲を並べて、新年をファミリーでも楽しめるように選曲されている(曲目詳細はホームページでご確認ください)。

 年明けの常連作曲家であるJ.シュトラウスでは、アン・デア・ウィーン劇場で上演される「女王のレースのハンカチーフ」というオペレッタが珍しい。なお、同じ劇場で演奏されるプルハー指揮ラルペッジャータによるバルカンルートを辿る多言語によるコンサートというのも大変興味深い。興味深いという点では、ユロフスキー指揮ベルリン放送響による「アウシュヴィッツ強制収容所開放80周年記念コンサート」も重い名を背負った演奏会。

 オペラ公演に話を移すと、1月は、ウィーン国立歌劇場のモーツァルト「魔笛」(ウェルザー=メスト指揮)、ザルツブルク・モーツァルト週間のモンテヴェルディ「オルフェオ」(プルハー指揮)、ベルリン州立歌劇場のクルターグ「勝負の終わり」(S.ベケット原作)、ハンブルク州立歌劇場のR.シュトラウス「ナクソス島のアリアドネ」(ナガノ指揮)、ジュネーヴ大劇場のR.シュトラウス「サロメ」(ムンドルツォ演出)、ミラノ・スカラ座のヴェルディ「ファルスタッフ」(ガッティ指揮)、テアトロ・レアルとリセウ大劇場で上演されるモーツァルト「イドメネオ」(ヤーコプス指揮)、パリ・オペラ座のワーグナー「ラインの黄金」(ビエイト演出)、オランダ国立オペラのR.シュテファン「最初の人類」などが要注目。

 オーケストラでは、ペトレンコがベルリン・フィルで披露するラフマニノフのオペラ「フランチェスカ・ダ・リミニ」やシベリウスの「レンミンカイネン組曲」、東京交響楽団の次期音楽監督に決まったヴィオッティがケルン・ギュルツェニヒ管を振るプロコフィエフの交響曲第5番、ラトル=チェコ・フィルのヤナーチェク「グラゴル・ミサ」などが面白そう。ほとんど言及できなかったが、「ザルツブルク・モーツァルト週間」はもちろん注目公演揃い。

(曽雌裕一・そしひろかず)
(コメントできなかった注目公演も多いので本文の◎印をご参照下さい)