【CD】ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第11番&第7番/ウェールズ弦楽四重奏団

 ウェールズ弦楽四重奏団のベートーヴェン全集第7弾。第11番「セリオーソ」スケルツォ主題提示のアゴーギク(テンポ変化)は独特で個性的だ。緩徐楽章のフガートでも声部の絡みをじっくりと聴かせる。終楽章は軽やかに疾走するコーダまで爽快に進む。第7番冒頭の両主題だけでなく、推移楽句などの多種多様な楽想を、実に美しく彫琢する。第2楽章では細かい動機とリズムの戯れが精緻に刻まれ、聴いていて楽しくなる。第3楽章は悲哀を湛えた旋律がとてもきれい。チェロも雄弁だ。フィナーレはロシア主題のダイナミックな躍動が生の喜びを謳歌しているかのよう。聴き応えがあるベートーヴェンだ。
文:横原千史
(ぶらあぼ2024年9月号より)

【information】
CD『ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第11番&第7番/ウェールズ弦楽四重奏団』

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第11番「セリオーソ」、同第7番「ラズモフスキー第1番」

ウェールズ弦楽四重奏団
【﨑谷直人 三原久遠(以上ヴァイオリン) 横溝耕一(ヴィオラ) 富岡廉太郎(チェロ)】

フォンテック
FOCD9905 ¥3080(税込)