目下世界を股にかけ、日本でも東京交響楽団との共演でめざましい活躍を続けるノット。ブルックナーの交響曲の録音企画は、彼が同楽団の音楽監督に就任して2年後の2016年より満を持して始まり、丁寧に続けられてきたものである。8番、5番、9番、4番に続き、作曲家のメモリアルイヤーの今年リリースされたのは第1番。とりわけリンツ稿(ノヴァーク版)の採択により初期交響曲の世界が幕をあけ、ノットが描くブルックナー像も次第に明らかになってきた。洞察力に富み、精緻な構築性を特徴とした演奏ながら、ライブらしい熱気も感じさせる。全集完成が楽しみになる一枚。
文:大津 聡
(ぶらあぼ2024年9月号より)
【information】
SACD『ブルックナー:交響曲第1番 /ジョナサン・ノット&東響』
ブルックナー:交響曲第1番
ジョナサン・ノット(指揮)
東京交響楽団
収録:2023年10月、東京オペラシティ コンサートホール(ライブ)
オクタヴィア・レコード
OVCL-00848 ¥3850(税込)