逝去の約4ヵ月前に行われた巨匠・飯守生涯最後のステージのライブ録音。当日は、そう思わずに聴いて、80歳を超えた飯守の溌剌とした運びと、盟友たる東京シティ・フィルのマエストロへの共感に満ちた演奏に感心したのを憶えている。CDでも基本的な印象は変わらないが、全4楽章の見事な構成、木管楽器の瑞々しさ、そして前作の8番以上に自然体と思える表現など、改めて気付かされる点も多い。中でも第4楽章の堂々たる音楽には別れの気配などまるでなく、ブルックナー音楽に対する飯守の矜持が感じられる。これは“毅然として温かな”傾聴すべき記録だ。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2024年5月号より)
【information】
CD『ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」/飯守泰次郎&東京シティ・フィル』
ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」(1878/80年稿・ノーヴァク版)
飯守泰次郎(指揮)
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
収録:2023年4月、サントリーホール(ライブ)
フォンテック
FOCD9897 ¥3080(税込)