第一次世界大戦の前後に生まれたヴァイオリンとチェロのデュオ曲2作に、三戸素子と小澤洋介が見事な録音を加えた。かねてから共演を重ねてきたコンビだけに、音色の統一感は出色のレベル。それを実現するための確かな技術、音楽の捉え方や表現の方向性の共有も万全で、近代的なラヴェルの傑作と土俗的なコダーイの大作をしっかり弾き分けながら、抜群の安定感で両作のもつ魅力を表現する。なにより、ともすると刺々しい演奏になりやすい両難曲が、これほど誠実で安心できる音色で聴けるのは貴重で、曲のイメージも洗い直される。最後を締めるパーセルの清涼感も印象的。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2024年1月号より)
【information】
CD『ヴァイオリンとチェロのための ラヴェル:ソナタ&コダーイ:二重奏曲 作品7/三戸素子&小澤洋介』
ラヴェル:ヴァイオリンとチェロのためのソナタ/コダーイ:ヴァイオリンとチェロのための二重奏曲 op.7/パーセル:ガヴォット〜プロパー・チューン
三戸素子(ヴァイオリン)
小澤洋介(チェロ)
ウッドノート・スタジオ
WNCD-1052 ¥2970(税込)