この20年間でマリインスキー・オペラを世界のトップ・レベルの水準に飛躍させたといわれるワレリー・ゲルギエフが、同カンパニーを引連れて2011年の2月に来日する。ロンドン響との来日公演の合間を縫って記者会見が行われた。
マリインスキー・オペラはこれまで6回の来日を果たしており、2011年で7回目となる。これまでに《炎の天使》《リング四部作》《カテリーナ・イズマイロヴァ》などの話題作を取り上げてきたが、今度の《影のない女》もゲルギエフのいちおしの作品だという。
「R.シュトラウスのオペラはとても好きでよく振ってきた。《影のない女》は上演される機会は多くなく、いわゆる“レパートリーオペラ”ではないが、R.シュトラウスが書いた素晴らしいオペラの一つであるのは確かだ。先日ロシアでこのオペラを初演したが、演出はイギリスのジョナサン・ケントが担当した。映像なども駆使し素晴らしい舞台となった。このオペラは天上界と地上の世界が共存しているため、日常と非日常をうまく表せないといけないが、ケントは丁寧かつ大胆に演出した。《影のない女》は難解と言われるが《サロメ》とは違い美しい音楽に満ちている。R.シュトラウスの色彩的なオーケストレーションをぜひ楽しんでほしい」
《トゥーランドット》については
「私がキーロフ歌劇場(現・マリインスキー劇場)でデビューした際に振ったのが《マノン・レスコー》だった。若いころは分厚いオーケストラの音量が、瑞々しい歌手の声をかき消さぬようずいぶんと悩んだものだが、しだいに音量のコントロールが上手くできるようになり、作品の理解も深まるにつれて、今ではプッチーニに対する愛情はますます大きくなっている。プッチーニのオペラは素晴らしい歌手が揃わないと、また興味が掻き立てられないと振らないことにしている」
ところで、これまでにマリインスキー歌劇場は多くの優れた歌手を輩出しているが、才能のある歌手の発掘についてゲルギエフは
「マリインスキー・オペラの団員のなかで、将来性のある歌手を見つけたらすぐに原石を磨く作業に入る」と語る。若手の育成もゲルギエフの重要な仕事のひとつだ。それと関連するのか「次回のチャイコフスキー・コンクールからムスティラフ・ロストロポーヴィチのあとを受けてコンクールの総裁を務めることにした。日本からも若い優秀な演奏家にコンクールに参加してほしい」と述べた。
マリインスキー歌劇場来日公演
★2011年2月12日(土)〜20日(日)
問:ジャパン・アーツぴあ03-5237-7711