【CD】松下功 メモリアル・コンサート2022 ライヴ at 紀尾井ホール

 2018年に世を去った松下功のメモリアル盤。藝大に入学する前のファゴット作品も収録され、同時代の影響下にある尖った作風から、自らの語法を探りあてその世界を深め広げていった軌跡を明らかにしている。後年、東洋思想、とりわけ仏教に惹かれていったことは、交響曲「陀羅尼」や最晩年のフルート協奏曲「浄土」などに表れているが、それらはエキゾティシズムや妖しさ、躍動感といった感覚的な美によって構築され、万人に胸襟を開く素直なヒューマニズムが創作の根底に流れているのを感じる。自らが組織したアンサンブル東風のメンバーを中心に、そんな故人の横顔が温かく描き出されている。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2023年12月号より)

【information】
CD『松下功 メモリアル・コンサート2022 ライヴ at 紀尾井ホール』

松下功:ファンタジー、オーボエとピアノのためのソナタ、時の糸Ⅰ、海の空間、藤戸、海へ そして夢に、交響曲「陀羅尼」(室内オーケストラ版)、フルート協奏曲「JODO」(浄土)(1管編成版)

高関健(指揮)
アンサンブル東風 
山田恵美子(フルート) 他

収録:2022年9月、紀尾井ホール(ライブ)
ナミ・レコード
WWCC-7990-1(2枚組) ¥4400(税込)