滝 千春(ヴァイオリン)

幼少期より大事にするプロコフィエフ作品で自身を発信

(c)KOHÁN

 プロコフィエフ没後70年を記念し、ヴァイオリンの滝千春がピアノの沼沢淑音と組み、ヴァイオリン・ソナタ第1番、第2番、「ピーターと狼」(根本雄伯編)を収録したデビューCDをリリース。6月6日には東京文化会館小ホールで「滝千春が弾く(かたる)新しい物語」と題して、デビュー15周年の記念リサイタルも予定している。

 「子どものころからプロコフィエフの音楽に魅了されています。彼は小説家でもあり、日記も綴っていました。音符を魂に移せるというか音を言語化することが上手で、そこに惹かれています。ソナタ第1番には20歳のころに出会い、カッコいい曲だなあと思いましたが、知れば知るほど深みのある曲で、作曲家自身がオイストラフにこう弾いてほしいと語ったという記録が残されています。ソナタ第2番は17歳のころから弾いています。内容が感覚的に理解でき、自然に演奏することができました」

 「ピーターと狼」の編曲版は、根本が物語に沿い、各々のキャラクターを生かしたすばらしい編曲に仕上げてくれた。

 「パリまで楽譜を受け取りに行ったのですが、譜面を見た途端に大興奮(笑)。ふたつの楽器のよさが存分に生かされた見事なまでの編曲で、これは録音に残さなくてはと考えました。いずれ楽譜の出版も実現させたいです」

 滝はソロ、室内楽、オーケストラと幅広い活動を展開しているが、「全部できる人になりたい」と語る。それらの活動によりレパートリーも増えるからである。今回のリサイタルではプロコフィエフ以外に、カンチェリ、シュニトケ、サイ、R.シュトラウスの作品が組まれている。

 「録音のときもそうでしたが、沼沢くんはこだわりの人で、ひとつの和音のなかの一音でも納得いくまで突き詰めていく。私とはプロコフィエフに対する思いが同質で、“おもちゃ箱のような音楽”と同じ表現をするほどです。リサイタルではファジル・サイの曲を演奏しますが、ピアノ・パートには内部奏法があり、幻想的な効果がすばらしいです。どうしても演奏したいと思い、ピアノをレンタルするほど気合いが入っています。日本では演奏されることも少ないと思いますので、貴重な機会です」

 CDではライナーノーツも綴り、プロコフィエフの音楽を言語化して自身のアプローチを発信。アムステルダム在住で、ミュンヘン放送管のコンマスも担った。その多様性が演奏を肉厚にし、聴き手を曲の内奥へといざなう。
取材・文:伊熊よし子
(ぶらあぼ2023年6月号より)

CDリリース記念 デビュー15周年記念
滝 千春 ヴァイオリン・リサイタル
プロコフィエフ没後70年 滝 千春が弾く(かたる)新しい物語 〜沼沢淑音と共に〜
2023.6/6(火)19:00 東京文化会館(小)
問:東京文化会館チケットサービス03-5685-0650
https://office-forte.com

SACD『Prokofiev Story』
妙音舎
MYCL00027
¥3520(税込)
2023.5/19(金)発売