天才の名作に注がれる清新な情熱
いま東京交響楽団のサウンドと音楽作りが興味深い。ノットを音楽監督に迎えた今年4月以降、10年に及ぶスダーン体制のもとで培われた端整で精緻なアンサンブルに、別種の開放感や生気が付与されつつあると思えるからだ。
来る11月定期のメインは、正指揮者・飯森範親が振るベルリオーズの「幻想交響曲」。斬新なオーケストレーションが色褪せない同曲は、そうした変化を知るに相応しい作品だろう。山形響の活性化で評価の高い飯森は、今年から日本センチュリー響の首席指揮者にも就任し、早くも清新な発想で新風を吹き込んでいる。50歳を超えていっそう脂が乗ってきた彼のアプローチも当然要注目。飯森の音楽はいつも情熱と活力に溢れている。そんな彼の「幻想」がいま東響でいかに響くのか? これは本公演1つ目の楽しみだ。
もうひとつの話題は、バルトークのヴァイオリン協奏曲第2番を弾くリチャード・リン。台湾に育ち、カーティス音楽院を経てジュリアード音楽院に学ぶ彼は、2013年仙台国際音楽コンクールの優勝及び聴衆賞獲得で大きく脚光を浴びた。今年6月には優勝記念の東京公演でブラームスのソナタ3曲を弾き、堅牢なテクニックと濃密な音色で実力を知らしめただけに、東響初登場への期待は大。演目は、民族性とモダニズムが最高の形で融合した円熟の名作であり、リンの音色に合った作品でもある。彼がこの難曲をどう弾くのか? 飯森のサポートを含めてこれも実に楽しみだ。
2つの情熱的なインパクトが待つ当公演。その密度の濃い時間をぜひ味わおう!
文:柴田克彦
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年11月号から)
第625回 定期演奏会
11/8(土)18:00 サントリーホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511
http://tokyosymphony.jp
第86回 新潟定期演奏会
11/9(日)17:00 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館
問:りゅーとぴあ025-224-5521
http://www.ryutopia.or.jp