シャープな感性で紡ぐパガニーニ
伝統と革新、大胆さと繊細さ、ストイックさとアグレッシヴさ。これら一見、背反するように思える感覚をひとつに束ね、しなやかな響きを紡ぎ上げるヴァイオリニスト。それが、トーマス・ツェートマイヤーだ。鋭敏な感性で定番とされる名曲に新たな魅力を与える一方、数々の新作を初演するなど現代作品の紹介にも力を注ぎ、室内楽奏者や指揮者としても活躍。早くも10代で注目を浴びた彼だが、決して慢心することなく、研鑽を重ねて、独自の境地へと進化を続けている。
そんな彼が、もっとも真摯に自分自身、そしてヴァイオリンと対峙できる作品として取り上げているのが、バッハに続いて、無伴奏ヴァイオリンの可能性を押し広げた不朽の名作、パガニーニの「24のカプリース」。ツェートマイヤーは、この作品に挑戦する都度、まったく新たな感覚で臨み、聴衆を驚かせている。いまだ進化の途上にある、ヴィルトゥオーゾの“いま”を捉えるのに、これ以上の作品はあるまい。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年9月号から)
10/17(金)19:00 トッパンホール
問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222
http://www.toppanhall.com