若き精鋭たちが挑むオール・ベートーヴェン・プロ
2020年11月に、渋谷区文化総合センター大和田の開館10周年を記念して同館のさくらホールで始まった「“Don’t Stop The Music” 一夜限りの若者たちの祭典」。コロナ禍にあっても音楽を止めてはならないという考えから、若い音楽家たちが立ち上がった。
3回目となる2023年3月のコンサートでは、初回から参加しているピアニストの實川風(初回はガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」、第2回はショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番を演奏)が弾き振りに挑む。今回の曲目は、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番。實川は、ベートーヴェンを自分のレパートリーの支柱として大切に思っている作曲家だという。彼は、近年、ソロだけでなく様々な室内楽にも積極的に取り組み、音楽の幅を広げている。子どもの頃からオーケストラ作品が好きだった實川だけに、今回初挑戦の指揮+ピアノ独奏に期待したい。
演奏会全体では、オール・ベートーヴェン・プログラムが組まれ、「大フーガ」を、ソリストとしても活躍の著しいヴァイオリニストの林周雅が率いる「林周雅 with Symphony Orchestra」が弦楽合奏版(ワインガルトナー編曲)で弾くほか、ベートーヴェンの最後の弦楽四重奏曲である第16番をラ・ノーテカルテット(篠原悠那、林周雅、飯野和英、加藤文枝)が演奏する。とりわけ「大フーガ」は演奏至難な弦楽四重奏作品として知られ、それを若い名手たちがより難しい弦楽アンサンブルという形態でどのように演奏するのかまさに興味津々である。
文:山田治生
(ぶらあぼ2023年1月号より)
2023.3/18(土)18:00 渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール
問:渋谷区文化総合センター大和田03-3464-3252
https://www.shibu-cul.jp