ワレリー・ゲルギエフ(指揮) マリインスキー歌劇場管弦楽団

名匠たちによる予測不能なバトル!?


 今秋、2年ぶりに来日するゲルギエフ&マリインスキー歌劇場管。昨年、あのパンチの効いたエネルギッシュな舞台に接することがかなわなかったので、リスナーの“欲求不満”も溜まっているはずだ。実は筆者も、彼らの逞しい生命力に心洗われたい一人なのだ。
 秋の来日で用意された2つのプログラムは、そんなファンの渇望を癒すに十分なものだ。サントリーホールでの2公演のうち、まず10月14日には前半にネルソン・フレイレをソリストに迎えてブラームスの「ピアノ協奏曲第2番」。フレイレといえば同じ南米出身のアルゲリッチとの当意即妙のデュオでも有名だが、本来は硬質なタッチ、スケールの大きな演奏で魅せてくれるピアニスト。シャイー&ゲヴァントハウス管と録音したブラームスの協奏曲集は発表当時主要なレコード賞を総ナメにした名演だが、今回はゲヴァントハウスに劣らず音が大きく重いマリインスキー管が相手だ。強烈なぶつかり合いが繰り広げられるのではないか。
 後半はゲルギエフが得意とするショスタコーヴィチの交響曲から第8番。全5楽章からなる骨太の構成と重苦しい曲想は、第二次大戦下という作曲当時の時世を反映している。そんな時代にタイムスリップするかのように、ゲルギエフはホールを緊張感の張りつめた空間へと塗り替えることだろう。
 翌15日は“伝家の宝刀”ともいうべきストラヴィンスキー3大バレエの一挙上演が控える。「火の鳥」「ペトルーシュカ」「春の祭典」すべて原典版というメインディッシュ3品のような凄いコースができるのも、たぶん彼らだけだ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年9月号から)

10/14(火)19:00、10/15(水)19:00 サントリーホール
問:ジャパンアーツぴあ03-5774-3040
http://www.japanarts.co.jp

他公演
10/9(木)熊本県立劇場コンサートホール
10/10(金)福岡シンフォニーホール
10/11(土)ザ・シンフォニーホール
10/12(日)石川県立音楽堂コンサートホール
10/16(木)愛知県芸術劇場コンサートホール
10/17(金)NHKホール
10/18(土)所沢市民文化センターミューズアークホール
全国公演の詳細は(http://www.japanarts.co.jp)でご確認ください。