飯守泰次郎(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

北欧情緒を味わい尽くす名曲プログラム

 澄んだ冬空を見上げると無性にシベリウスを聴きたくならないだろうか。東京シティ・フィルの第71回ティアラこうとう定期演奏会は、桂冠名誉指揮者である飯守泰次郎の指揮によるオール・シベリウス・プログラムが組まれた。ソリストには若き気鋭、荒井里桜が招かれる。

 曲は交響詩「フィンランディア」、ヴァイオリン協奏曲、交響曲第2番。まさにシベリウスを代表する傑作が並んでいる。「フィンランディア」は1900年に初演された人気曲。当時、ロシアの圧政に苦しんでいたフィンランドの人々の愛国意識を高めた作品として知られている。かつてはこの曲の背景を過去の歴史的な文脈でしかとらえることができなかったが、現実にロシアがウクライナに侵攻する今、「フィンランディア」はまた新たな意味づけを伴って聴かれる音楽になりつつあるかもしれない。

 ヴァイオリン協奏曲のソリストを務める荒井は1999年東京都出身。第15回東京音楽コンクールと第87回日本音楽コンクールで第1位を獲得した注目の若手だ。すでにNHK交響楽団をはじめとする国内主要オーケストラと共演し、スイスのローザンヌ高等音楽院を経て、現在はジャニーヌ・ヤンセンに師事している。次代を担うスターの呼び声が高い。

 交響曲第2番ではマエストロの老練な指揮のもと、雄大で熱気あふれる音楽がくりひろげられることだろう。終楽章の高らかな賛歌がもたらす高揚感は格別だ。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2022年12月号より)

第71回 ティアラこうとう定期演奏会
2023.1/21(土)15:00 ティアラこうとう
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 
https://www.cityphil.jp