おと と おと と vol.16 少年の魔法の角笛 ~グスタフ・マーラーの音絵本〜

人間の生そのものである深い歌を絵本のように楽しむ時間

 マーラーは宇宙を音響的に包括したような交響曲で知られるが、人間の実存の奥の奥に迫るような歌曲もまた、あらゆる感情が包括されていて深い。特に、ドイツの民謡詩集から選ばれた詩に音楽をつけた「少年の魔法の角笛」は、自然の風景や動物、日々の生活や愛、絶対的な神、そして戦争や死まで、人間とそれを取り巻く世界が、曲ごとに満ち満ちている。

 どの歌をどのパートに歌わせるか、マーラーは指示していないが、そこがうまく歌い分けられると、人間の「生」そのもののような深くて精緻な美しさが立ち上る曲たちだ。

 昨年の東京音楽コンクールで第2位と聴衆賞を獲得した花房英里子(メゾソプラノ)と、一昨年の日本音楽コンクール第1位の小林啓倫(バリトン)。青年期のマーラーが作曲した16曲を適切に歌い分け、深さと同居する瑞々しさも引き出すだろう(ピアノは朴令鈴)。プロジェクションマッピングで投影される絵と一緒に、絵本のように聴けるから、深い世界が楽しく味わえる。そんなとき人は幸福を感じるものだ。
文:香原斗志
(ぶらあぼ2022年11月号より)

2022.11/29(火)19:00 Hakuju Hall
問:ビーフラット・ミュージックプロデュース03-6908-8977 
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