アニバーサリーイヤーの英仏2大作曲家を一夜で
東京シティ・フィルの11月定期は、エネルギッシュな音楽の伝道師・藤岡幸夫が洒脱な選曲で聴かせる。前半は藤岡が得意とするイギリス音楽より、今年生誕150年を迎えるヴォーン・ウィリアムズ、後半はその10歳年上にあたるドビュッシーと、時代を代表する英仏の2大作曲家からそれぞれ2作ずつをチョイスし構成した。
「トマス・タリスの主題による幻想曲」はヴォーン・ウィリアムズの出世作となった作品で、弦楽四重奏+2群に分かれた弦楽合奏が、ルネサンスの作曲家の主題をモダンな装いのもとに現代のホールにこだまさせる。「2台のピアノのための協奏曲」は、はじめ1台のピアノ協奏曲として作曲されたが、あまりにも演奏が難しかったため2台用に改作されたという曰く付きの作品。この作曲家にしてはかなり尖ったところもあるが、最後は清涼なエンディングを迎える。実演ではなかなか聴けない珍しい曲だ。独奏は寺田悦子、渡邉規久雄の夫婦コンビ。長年の競演を通じて培われた呼吸で、この複雑な音楽の骨組みを明快に描き出してくれるだろう。
後半のドビュッシーはフルートがたゆたい幻想的に始まる「牧神の午後への前奏曲」で幕を開け、朝焼けに輝く水面から荒れ狂う大海原まで、大自然が見せる多彩な表情を活写した交響詩「海」へとつなげる。
アルカイズムに始まりモダニズムを経て、世紀末シンボリズム、印象派へと至る英仏海峡を挟んだダイナミックな旅に、藤岡が元気いっぱいのタクトで操縦する東京シティ・フィルの豊潤なサウンドに乗って出かけよう。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2022年10月号より)
第356回 定期演奏会
2022.11/10(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002
https://www.cityphil.jp