【CD】火の鳥(全曲版) 他/原田慶太楼&N響

 原田慶太楼はその経歴からアメリカンなイメージがあるが、実はロシアものとの相性も抜群だ。本盤の演奏がその証左。N響定期のライブで、全曲版がいい。組曲にはない箇所が特に印象的。たとえば〈イワン王子に捕らえられた火の鳥〉の追いかけるスピード感や嘆願のチェロソロや神秘的な木管ソロ。N響独奏陣の巧さが際立つ。〈不死の魔王カスチェイの登場〉は奇怪かつ異様で、いかにもラスボスが来た感じだ。〈カスチェイの目覚め〉と〈カスチェイの死〉も印象的。もちろん組曲にある〈王女たちのホロヴォート〉(ウクライナ民謡)のオーボエソロ、〈カスチェイたち一味による踊り〉の不気味さと超高速。そして〈フィナーレ〉の高揚も感動的だ。
文:横原千史
(ぶらあぼ2022年10月号より)

【information】
CD『火の鳥(全曲版) 他/原田慶太楼&N響』

ストラヴィンスキー:バレエ音楽「火の鳥」全曲(1910年版)/ショパン(ストラヴィンスキー編):夜想曲 変イ長調 op.32-2(管弦楽版)

原田慶太楼(指揮)
NHK交響楽団

収録:2022年1月、東京芸術劇場 コンサートホール(ライブ)
日本コロムビア
COCQ-85591 ¥3300(税込)