後期ロマン主義の伝統に根ざしつつ、故国ハンガリーの民俗的要素を採り入れた独特の作品を遺したドホナーニ・エルネー(エルンスト・フォン・ドホナーニ)(1877〜1960)。リスト音大へ留学中の7年前、その音楽に魅了されたピアニストの鈴木啓資は、「納得できる演奏ができるまでは」と研究に専念してきた。そんな名手が“満を持して”発表した、日本人奏者による初のドホナーニのピアノ独奏曲集。親しみやすい「ハンガリー牧歌」を軸に、10代で書かれたマズルカ、煌びやかなワルツの編曲など、シンプルながら魅力的な和声に彩られた佳品の数々を、熱い思い入れとともに、清冽なタッチで紡いでゆく。
文:笹田和人
(ぶらあぼ2022年9月号より)
【information】
SACD『ドホナーニの世界 Vol.1 ―ハンガリー牧歌― /鈴木啓資』
ドホナーニ:パストラーレ(ハンガリーのクリスマスの歌)、ガヴォットとミュゼット、アルブムブラット(アルバムの綴り)、マズルカ ハ長調、同変ロ長調、ハンガリー牧歌/J.シュトラウスⅡ(ドホナーニ編):喜歌劇《ジプシー男爵》より〈宝のワルツ〉、同《こうもり》より〈親しき仲〉
鈴木啓資(ピアノ)
オクタヴィア・レコード
OVCT-00201 ¥3520(税込)