エマニュエル・パユ SOLO Vol.3

笛のカリスマが導く、時空を超えた「音の旅」

(c)Denis Felix

 エマニュエル・パユの演奏は、一流フルート奏者の中でもひときわ特別感がある。ベルリン・フィルの首席奏者とソリストの両面で活躍する彼の、破格の技量は言わずもがな。それ以上に特別感をもたらしているのは、他の奏者にない豊麗な音色と歌い回し、そして並外れた吸引力や訴求力であろう。そうした特別感が最大限に発揮されるのが、東京オペラシティで行う無伴奏リサイタル「SOLO」だ。同公演はこれまで2017年と19年に開催され、一人舞台に立つパユのカリスマティックな音楽性に、満員の聴衆が息をするのも忘れるほど惹き込まれた。

 その第3弾が7月に行われる。プログラムは19年のコンセプトを踏襲し、バロック時代の巨匠テレマンの「無伴奏フルートのための幻想曲」全12曲中の6曲の間に、5曲の現代作品が挟まれる。今回の現代ものの特徴は、ブーレーズ作品以外の4曲が18年以降にパユのために書かれた作品であること。19年度武満徹作曲賞審査員のマヌリや映画音楽で知られるデスプラ等が、パユの持ち味を想定して書いた最新作は、実に興味深い。しかもそれだけではない。テレマンと交互に演奏されることで、「互いにこだまし合い、奥行きのある写真のような効果が生まれる」(パユ〈前回のプログラムより要約〉)のだ。

 パユ自身も語るように「音が旅し、空気が旅するには、十分な空間が必要」。その点で、生気ある音が空間を満たす東京オペラシティはこの上なく相応しい。ここは、休憩なし約70分の「時空を超えた音の旅」に身を浸し、「スリリングで価値ある体験」(パユ)を得ることにしよう。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2022年7月号より)

2022.7/11(月)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 
https://www.operacity.jp