シリーズ「新しい視点」 紅葉坂プロジェクト Vol.1

常識をくつがえす新鮮なアイディアの公募プログラムを紹介! 

 神奈川県立音楽堂で、企画公募のためのシリーズ「新しい視点〈紅葉坂プロジェクト〉」が始まっている。音楽界を牽引する一柳慧、沼野雄司、鈴木優人が選んだ、いずれも既成の枠を破る尖った3組が7月に公演を開催する。

 国内外で活躍する滝千春(ヴァイオリン)と中野翔太(ピアノ)による「音+音」は、若き作曲家、梅本佑利(2002年生まれ!)とのコレクティブで、バロック時代の大聖堂から現代のゲームセンターまでを独自の視点で再現し、グレゴリオ聖歌から新作までのプログラムで響きの物語を編む。

 河村絢音(ヴァイオリン)と佐原洸(エレクトロニクス)による「kasane かさね」は、今や楽器といえるほど発展した電子音響を用いてヴァイオリンの可能性を拡張し、音響表現の現在を提示する。現代音楽界の雄グロボカール、マヌリから佐原の新曲までと精選のプログラムだ。

 ささきしおりらによるパフォーマンスは、バスドラムに貼った特殊な紙に絵具で描くことで音を鳴らし、同時にその音の証しである描く行為と線描の映像を流す。聴く/観るという異なる表現形式を混在させて音楽/美術の境界をも融解する企てだ。

 彼らは今年2月、観客を迎えて公開プレゼンテーションを行った。沼野や鈴木からのコメントに向き合い観客からの質問・意見を受け止め、推敲を重ねている。

 なお、公演日には審査で次点となった2企画、PAO-C(中川丘、野呂有我)によるサウンドアートと西原尚によるサウンドスケープ・パフォーマンスも行われる。

 7月2日は紅葉坂で創造力の刺激を全身に浴びる一日を。
文:有川真純
(ぶらあぼ2022年7月号より)

2022.7/2(土)15:00 神奈川県立音楽堂
問:チケットかながわ0570-015-415 
https://www.kanagawa-ongakudo.com